ぶっちゃけ�� ページ48
個室の外からも、俺と同じ反応の声が聞こえてきた。
松「自分のオトコ、可愛いて思って当然だろ？あ？」
壁を隔ててすぐそこにある光景を目で見ていなくても、奴らがどんな顔をしているのか空気で感じる。
俺を庇う為とは言え、そんなことを言ったらすぐに噂になって、潤くんも何を言われるのか分かんないのに…
握っている拳が、さっきとは違う理由で震え出した。
松「そういうことなんだよ、分かったか？」
奴らがゴチャゴチャと言っているけど、そんなのは耳に入らない。
松「あいつに指一本でも触れたら俺が許さねぇからな？」
笑いは一切含んでいない声。
松「今度あいつに対する汚らわしい妄想を抱いたら、テメーらブッ飛ばすからなッ！！」
狭い個室の中で、潤くんの怒鳴り声を聞きながら唇をキュッと結んでいた。
すっかり静まり返ったトイレ。
人の気配を感じない。
俺はそっとロックを解除した。
ゆっくりと扉を開ける。
個室のすぐそばでぽつんと一人で立っている男と目が合った。
俺の顔を見た途端、彼は凛々しい眉をほんの少し下げた。
ニ「あ、あの…」
松「…あんなの気にすんなよ」
ニ「え…？」
俺を見つめる表情からして、奴らに好き勝手言われて俺が傷付いていると思っているのだろうか。
でも実際の俺は、あいつらに卑猥な妄想をされていたことなんて、すっかりどうでもよくなっていた。
ニ「…あの…ありがとうね…潤くん」
気持ち上目遣いで素直にお礼を伝えると、潤くんが一歩近づいた。
松「…さっきは変なこと言って悪かった。どうしてもアイツらを黙らせたくて」
ニ「ああ、いや…俺は全然…」
『変なこと』だなんて俺は思っていないし…
松「今後、誰かに何か言われたら俺に言えよ。俺が、ブン殴ってやるから。な？」
力強い眼差し。
俺はその真っ直ぐな瞳を見つめながら頷いた。
松「…行こうぜ」
クルリと向きを変えて歩き出す彼。
俺は足を動かすことなく、その後ろ姿を見つめていた。
何に対してか分からない。
何の感情か分からない。
俺の心臓が、トクントクンと音を立てていた。
−続−
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年2月16日 1時
