シンデレラと王子達�� ページ45
午後の授業もなんとか切り抜け。
家の敷地内に自転車を停め、ガチャリと玄関のドアを開けたら、いつもと違う空気が流れてきた。
いつもよりも暖かいというか、温もりのある雰囲気を感じた。
すると、一階の廊下からいつもは聞こえてくるはずのないスリッパの音が聞こえてきた。
母「あら和くん、おかえりなさい」
ニ「ただいま…あれ…？」
俺が帰ってくる時間には居ないはずの母親が何故か家に居て、戸惑いながらさり気なく鞄で胸を隠した。
母「今日はパートが午前中までだったのよ♪」
ニ「あ、そうなんだ」
エプロン姿の母親がお出迎えなんて数年ぶりで、なんとも言えない気持ちになった。
母「智もそろそろ帰ってくる頃かしら？」
ニ「あー多分」
母「じゃあ、智が帰ってきたらおやつにしましょ♪」
「はい」と返事をして階段を上がっていった。
おやつと聞いて、昔、本当の母親がよく俺におやつを用意してくれていたなって、なんだか懐かしい気持ちになった。
部屋に入り、ドサッと鞄を投げ捨てた。
学ランのボタンを外しながら、俺はぼーっと考えていた。
おやつて何だろうな。
そういえば母さんは、よくおやつにミルクパンを用意してくれていたっけな。
あれ、やっすいし、ちょっとパサパサなんだけど美味いんだよね。
また食べたいなぁ…
ワイシャツを脱ぎながら、おやつのことを考えるのに集中していたせいか、俺は階段を上がってくる音に気が付かなかった。
不意に、背後からマフラー越しに胸を揉まれた。
ニ「ンニャあああッ‼‼」
思わず変な叫び声を上げてしまった。
智「もっと、イヤん♡とか言ってよ」
ニ「うるさーい！勝手に揉むなぁーーッ！」
振り向きざまにビンタをお見舞いしてやろうと思ったのに、見事にスルリとかわされた。
いつの間にか帰ってきていた兄貴と向かい合った途端、パサンと頭に何かを乗せられた。
それを素早く両手で掴んで見てみたら、透明のフィルムで包装された白い布のような物だった。
ニ「何これ」
智「さらし」
ニ「え？」
智「買ってきた」
クルリと背を向けた兄貴が、すぐに足を止めた。
智「そうだ、かず。朝、このまま男に戻れなかったらどうしようて言ってたじゃん？」
背中を向けたまま訊いてくる兄貴。
ニ「…それが何か」
智「そん時は、俺が嫁に貰ってやるから安心しな」
俺の顔は見ずにそう言い残して、スタスタと部屋を出ていった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年2月16日 1時
