シンデレラと王子達�� ページ44
先生に智の番号を教え、俺はイジイジと自分のスマホの縁を指先でなぞっていると、先生は素早くスマホをスーツの内ポケットにしまった。
櫻「ところで、どう？クラスの生徒達にはバレずにやれてるかな？」
ニ「…今のところ多分バレてはいないと思いますけどね…時間の問題だと思いますよ」
櫻「う〜ん…」
松「センセー。もしニノが女だってバレたらどうなるんすか？」
櫻「それは…残念だけど、退学は免れないだろうね」
綺麗に整った眉毛をくねらせて困った表情を浮かべた。
松「どうにかならないんスか？」
櫻「どうにかしてあげたいけどね…なんせウチは男子校だからねぇ」
その通り過ぎて、俺も潤くんも何も言えやしない。
櫻「とにかく…男に戻れるまで、なんとかバレないようにしてあげたいんだけどね…」
ニ「先生…俺、男に戻れますかねぇ…？(泣)」
櫻「う〜ん…申し訳ないけど、妖精だとか魔法だとかっていう次元の話になると、正直俺は分からないし、無責任なことは言えないんだけど…」
先生がスッと俺の両肩に手を添えた。
櫻「だけど俺は…解けない魔法は無いと思ってるよ」
俺の肩を掴みながら静かな口調で言った。
ニ「えっ…」
櫻「シンデレラみたいにさ、いつか魔法は解けるんじゃないかなって思うんだよね」
ニ「俺…今、シンデレラなんですか…？」
櫻「多分ね」
俺の頭をクシャッと撫でて、フッと微笑んだ。
ああ…ステキ。カッコイイ。
妖精に魔法をかけられて女になってしまったというメルヘン現象な俺に、先生もメルヘンな表現で俺を励ましてくれている。
俺が今シンデレラだというのなら、王子様はやっぱり先生だよね。
だったら、0時が来なくてもいいかもと思ってしまうくらい、俺の気持ちがパァと明るくなった。
パタンと屋上の扉が閉まって先生が居なくなった後も、俺はまだシンデレラガールな気分で王子様を見送っていた。
松「けっ。何がシンデレラだよ」
ニ「え？」
松「ああいうクサイ台詞で、女をたぶらかしてんだろーな、あのセンコーは」
ニ「たぶらかすって(笑)」
松「下心が見え見えだな」
ニ「そんな、潤くんや兄貴じゃあるまいし」
キッと鋭い目つきが向けられる。
松「俺はそんな安っぽい王子にはなりたくねーな」
スッと立ち上がって、先に屋上を出ていってしまった潤くんが、どうしてそこまで櫻井先生が気に食わないのか俺にはよく分からなかった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年2月16日 1時
