繋がり�� ページ4
あれは入学して間もない頃だった。
体育館で初めての全校集会が行われた時。
校長のなが〜い話を時折あくびをしながら半分も聞いていなかった俺は、頭の中が『帰りたい』の一言で埋め尽くされていた。
ようやく校長の話が終わった後、今度は新入生の俺達に向けての、全教員の自己紹介が始まった。
一人ずつ壇上に上がって自己紹介がてら一言挨拶をしていくスタイルで、それもまたダルいなぁなんて思いながら見ていた時。
他の教員とは明らかにオーラの違う教師が壇上へ上がった。
遠目から見ても、人の目を惹く容姿なのが分かった。
話している感じも、知性が溢れ出ていて。
笑った顔がとにかく爽やかでカッコ良くて、でも可愛いさもあって。
俺の目には、その人がキラキラ輝いて見えた。
それが、櫻井先生だった。
あんな先生が担任だったらなとか、あの先生に教えてもらいたいなという俺の願望は全く叶わず。
3年生を受け持っている先生で、残念ながら授業もあの先生に当たる科目は一つもなく。
櫻井先生との接点が何一つ無い俺は、心底残念に思いながらいつか何かしらの接点を持ちたいと密かに願っていた。
そんな時。
「あ、キミ、ちょっと待って！」
一人で下駄箱へ向かって廊下を歩いていた時、不意に後ろから声をかけられ振り向いた。
その声をかけてきた人が、まさかの櫻井先生だった。
ニ「あ…俺ですか…？」
櫻「うん、そう、キミ！キミさぁ…二宮和也くんだよね？」
何故だか櫻井先生が俺の名前を知っていた。
しかもフルネームで。
ニ「あ、はい…そうですが」
櫻「ああキミね？あの、あれでしょ？大野智の弟くんなんだよね？」
大野智。
兄貴の旧姓。
ニ「ああ…はい」
櫻「そっかそっか。俺ね？去年まで大野の担任だったんだよね」
えー！そうなんだ！？て、頭の中で驚いた。
櫻「大野…じゃなくて、智…とはどう？上手くやってるかな？」
出席簿と教科書を抱える櫻井先生が、ほんの少し上目遣いで遠慮がちに訊いてきた。
ニ「ああ、まあ…それなりに」
緊張のせいだろうね。
素っ気なく可愛げもなく返す自分の性格を心底恨んだ。
櫻「あいつさぁ、ホント優しい奴だからさぁ…まだ兄弟になったばかりで戸惑いもあるだろうけど、仲良くしてあげてよ？」
まるで智の友達かのような言い方に、先生と智はそれなりに仲が良かったんだなって思った。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年2月16日 1時
