バレずに過ごせるのか�� ページ29
学校に着いて、自転車を置いて。
潤くんと一緒に昇降口へ向かっている今、どうしても周りの視線が気になって鞄で胸を隠してキョロキョロとしながら歩いた。
松「堂々としてろよ。その方がバレねーから」
相変わらず学ランの前を開けて鞄を担いで歩いている潤くんが、挙動不審な俺の様子を見兼ねて声をかけてきた。
ニ「ほんとにバレない…？」
松「ふつーにしてりゃ男に見えるだろ」
ニ「そうかなぁ…」
松「でも」
突然、潤くんが俺のお尻をポンと触ってきた。
松「ケツはプリっとしてるけどな♪」
ニ「ひぃっ‼ちょっとぉ！！潤くんっ！！」
まるで、ちょっかいを出してきた男子を相手に、ムキになって追いかけ回す女子のように、ベーっと舌を出す彼を追いかけながら昇降口へ入った。
下駄箱で上履きに履き替えて階段を登り始めた時。
いつかと同じように、正面から降りてきた黒いジャージ姿の櫻井先生とバッタリ鉢合わせてしまった。
俺はとっさにまた鞄で胸を隠した。
櫻「松本クーーン」
腕を組んで仁王立ちする櫻井先生が、この間よりも険しい顔で潤くんを見下ろした。
松「すんません」
櫻「キミはそんなにグラウンドを走りたいのかなぁ〜〜」
松「まさか(笑)勘弁してくださいよ」
櫻「だったらちゃんと朝練出ろよ」
松「はい。明日からちゃんと出ます。今日もグラウンド10周走りますんで。すいませんでした」
いつものスカした態度とは違って、真面目に頭を下げる潤くんの姿に拍子抜けしたのか、櫻井先生は腕を組む手を解いてポリポリと人差しで頭を掻いた。
松「行こうぜ」
静かな口調で俺に声をかけて、潤くんは櫻井先生の横を通って階段を登り始めた。
俺は鞄を抱えながら意味も無く先生にペコッと一礼して、潤くんの後に付いていった。
櫻「二宮」
不意に後ろから先生に呼ばれて、ビクッとしながら振り向いた。
ニ「は、はい…」
櫻「なんかさぁ、今日いつもと雰囲気違うね？」
ニ「えっ…そ、そうですか…？」
櫻「う〜ん…何だろうなぁ。何が違うんだろ」
まじまじと俺の顔を見つめてくる。
櫻井先生が。
あの綺麗な大きな瞳で俺を見つめてくる。
なんて美しいんだろう…
すると、サッと潤くんが俺の前に割り込んで立った。
松「センセー、それセクハラっすよ」
櫻「えぇッ‼」
松「ニノ、行こうぜ」
グイッと潤くんに腕を引かれ、呆然とする先生をチラリと見送って階段を上がった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年2月16日 1時
