never..2

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side:R


優しいおばちゃんがいるお土産屋さんの前の道を渡って、大きい木に隠れた細い砂利道を降ると海辺に出る。
夏なのに誰もいないその静かな場所にストンと腰をおろした。
嫌なことを思い出したせいか食欲はなくなって、おまけで貰ったチョコレートを一粒口に入れて目を閉じた。
この場所で、こんなに日が照って暑い場所で二晩過ごしたと思うとそれだけ追い詰められていてそれだけ目の前に夢中やったんやと思う。



＊



大ちゃんと家を抜け出して、ここで一晩過ごして目をあけると、大ちゃんが1人、流星を見て泣いていた。


『大ちゃん...？泣いてるん...？』


そう手を伸ばして涙を拭いながら、頭に過ぎったのは大ちゃんのお母さんやった。
大ちゃんには言うてなかったけどあの日、大ちゃんが風邪で寝込んでお見舞いに行ったあの日、大橋くんと大ちゃんの部屋を出たら大ちゃんのお母さんが驚いた表情で流星の事を見つめていた。
あの時は何も思わなかったけど、きっと困惑していて大橋くんもいて、余計に何て声をかけていいのかわからんかったんやと思う。
きっと彼女は僕らのやり取りを見たんやと思う。
だからきっと、夏休み前に僕と大ちゃんが一緒に帰ろうとしているのを止めた時、あんな冷たい目で流星を見たんや。


『大ちゃん...、』


涙を流す理由がきっと何かあるんや。
また前みたいに会えるようになるって、
その時まで待とうと言った大ちゃんが急に会いたいと言い出して、こうやって苦しんでる。
名前を呼んだら流星のことを抱きしめて、やけど何も言わなかった。


「早く、」

『うん？』

「早く、大人になりたい」

『.....、うん』


大人になりたい。
やけど大人になってしまったら、僕と大ちゃんは今みたいにいれるのかな。
こうやっておることがキラキラした時間に大人になっても見えるんかな...？
僕のお母さんもきっと大ちゃんのお母さんも、僕らのことはキラキラにうつっていないのに。


『.....、帰りたく、なった？』

「.....」


答えなんかわかっていた。


「...、ずるいなぁ」


一晩過ぎたら変わるものでもなかった。
どうしたって僕らは子どもで、どうしたって帰らなくちゃいけなくて、どうしたって家族の言うことを聞かないとまだーーー、


「帰りたくないよ、一生」

『流星も』

「ほんまに？一生やで、永遠にやで、帰りたくないんやで」

『ほんまに、流星は、』


流星は大人になりたいんじゃなくて、
今のままここにおりたい



＊

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