【あきえな】何でお前に ページ1
ある東雲家の休日
「ふぅ、疲れた……でも、いい服買えちゃった！」
絵名は買ったものが入っている袋を玄関に置くと、腰を下ろした。
「あー、運ぶのめんどくさい………って彰人じゃん。」
絵名が後ろを見ると、そこにはちょうど通り掛かった彰人が。
「………やらねぇぞ。」
彰人はそう言うと、すぐにその場から離れようとする。
「ちょっと、逃げるな！」
絵名は立ち上がると、彰人の腕を掴み、玄関に連れ戻した。
「自分で歩けるのかよ……てか、オレも出掛けんだよ。」
「そんな時間かかんないから！私はその間に水分補給して………って」
絵名はよく見ると、彰人が先程から手を後ろにして何かを隠していることに気が付いた。
「何隠してんの？…見せてよ。」
絵名は彰人の後ろを覗き込む。
「は？何も無ぇよ…」
そう言ってシラを切るが、彰人の背中からは紙のようなものが見え隠れしている。
「…見せなさい！！」
「…おいっ！」
絵名は素早くその小さな紙を奪い取ると、それを顔の方に近付けた。
「…パンケーキ一枚無料券！？なにこれ、めっちゃ良いじゃない！」
そう言うと絵名は目を輝かせる。
「返せよ…！」
彰人はその券を奪い返そうとするが、絵名は手を後ろにしてそれを避けた。
「言っとくけど、絶対お前なんかに渡さねぇからな！」
「だって、彰人が私に秘密でパンケーキ食べようとしてたからじゃん。」
「だからってお前がそれ持ってるのはおかしいだろ！」
「彰人が持ってたら使いそうだから預かるだけだし！」
「どの口が言ってんだよ！」
「はぁ！？」
そうやって言い合う内に、彰人は力ずくでその券を取り返そうとし始めた。
「早く返せって！」
「ホントしつこいわね…！」
彰人は絵名の腕を掴み、隠している紙を奪おうとするが、絵名も負けじとそれに抵抗する。
そうして二人は取っ組み合いを始めてしまった。
そして、彰人がその紙を絵名の手から奪い取ったそのとき、彰人がバランスを崩して絵名の方へ倒れ込んでしまった。
紙がひらりと床に落ちる。
絵名は彰人の下敷きになり、互いの顔が間近にある状態になる。
「………っ！」
「………」
彰人はすぐに絵名の上から退く。
「悪い。…………て、何で顔赤くなってんだよ…」
体を起こした絵名は顔を真っ赤に染めて一点を見つめていた。
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作者名：える/妹 | 作成日時：2021年9月13日 1時
