【奏まふ】恋人 ページ14
奏視点
わたしは作業の一環としてまふゆと一緒にセカイに訪れていた。
それから何時間か経った。
「…そろそろ休憩しようか。」
「…うん。」
そして二人は休憩に入るが、やはりお互いに何も話すことはなく、ただこの静かで何もないセカイに座り込んでいるだけである。
今日はここに来てからというもの、ミクたちを見ていない。ここと離れた所にいるのだろう。そんなことを考えながら、この心地よい空間に身を委ねる。
「奏。」
名を呼ばれ、まふゆの方を見る。
「どうしたの、まふゆ。」
「前、言ってたこと。」
前言ってたことって………
数日前のナイトコード。たまたまわたしとまふゆしかまだナイトコードに来ていなかったときのこと。
「わたし、…まふゆのことが好きなのかもしれない。」
「自分でもよくわかってないけど、まふゆに伝えたくて。」
この不思議な気持ちをどうしようもなく伝えたくなって、口から出た言葉。
「……それじゃあ、私は尚更わからないね。」
数秒経って、まふゆのそんな声が聞こえてくる。
「うん、そうだよね……これはわたしの単なる好奇心で言ったことだから、まふゆは気にしなくてもいいよ。」
「…ごめん、作業に戻ろう。」
それから、その話が二人の間で出ることもなく数日が過ぎていた。
そんな中、この静かなセカイでまふゆが口を開いた。
「奏は私と、恋人になりたいの？」
「……え。」
突然出た言葉に、思わず固まってしまう。
恋人……！？まふゆのことは好きだけど、そこまでは考えたことなかったな…
「えっ、と……そこまで考えたことなかったから…」
「……でも、なれるなら…なってみたいな。」
恋人になれば、まふゆを救うための近道になるかもしれない。何より、わたしはまふゆのことが好きだ。恋人になることでまふゆのことがもっと知れるならば、そんなのなりたいに決まっている。
そんなことを考えている内に、返事は直ぐに返ってきた。
「…いいよ、なっても。」
まふゆはあっさりとそう言う。
「……なんで、そう思ったの？」
わたしはまふゆにそう尋ねる。
「何か感じるかもしれないから。」
まふゆは一言、そう言った。
「そっか。」
ふ、まふゆは可愛いな。
わたしはまふゆに笑みを溢すと、まふゆの頬にキスをした。
まふゆは少しだが驚いたような表情をしている。
「……！ごめん、驚かせちゃったよね…」
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作成日時：2021年9月13日 1時
