十二話 ページ13
「……ん」
今の時刻は六時丁度。僕がいつも目覚める時間だ。
なんとなく寝返りを打ち、ドアの方を見つめた。
すると、見慣れた人間がドアをすーっとすり抜け、この部屋から出て行った。
「……は!?」
いや、そんなはずは……。
昨日あれこれ考えた結果、「見えなくなった」ということに落ち着いたのに。
僕は体を起こし、ベッドから降りる。
そして、ドアをゆっくり開けて階段を覗いてみた。
すると、
「あ、想空!おはよー!」
階段の下の方で、人間……いや、亡霊、
碧人が二カッと笑っていた。
「は……いや、おはようじゃなくて」
「朝はまずおはようだろ。はい」
「え、おはよう……?」
僕は階段を降りながら呟くように言った。
「あ?聞こえない。もっと大きな声で」
「お、おはよう」
「なぁにぃ?なんてぇ?」
プチンッ
僕は何か腹が立った。
碧人の顔や声。言い方全てにイラっときた。
碧人だけに対して発動する、僕の短気な性格。
「お、おはよう!!」
あまり大声を出さないからか、声が裏返った。
は、恥ずかしい……。
けれど、そんな挨拶に返事をしたのは碧人ではなかった。
「……おはよう。朝早いのね……」
「へ?あ、うん……」
それだけ言うと、母さんはリビングへ向かった。
……久しぶりだった。いや、久しぶりというか、初めてな感じ。
母さんと少しだけ会話ができた。
それだけなのに、嬉しかった。
何で母さんは声をかけてくれたんだろう。
こんなこと、考える時間なんて一秒もなく分かった。
「……ありがと」
僕は碧人に向かってボソッと呟いた。
「へいへい」
碧人は短い返事をした。
背中越しに言ったから、顔は見えないけれど、
なんとなく、うざい表情をしているのが僕には分かったんだ。
っていうか、碧人のこと見えなくなったのか?とか考えていたが、普通に見えるじゃないか。
昨日の考えていた時間は何だったんだ……。
時間を返せアホ亡霊!
……やっぱり、僕はアイツが嫌いだ。
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餅木(プロフ) - シリアスな感じが好きです! (2022年1月26日 18時) (レス) @page11 id: c3e8d9b56b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つきなが | 作成日時:2018年2月7日 18時