特別 “blue” ページ38
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side black
樹は、わかりやすく俺を特別扱いする
「北斗そこ危ないから気をつけて」
「大丈夫？風邪引いてない？」
「濡れたままでいるなって、俺が乾かしてやるから」
「眠いなら寝ていいぞ」
だから俺も、同じようにわかりやすく樹を特別扱いする
「樹ここ滑るよ」
「もうちゃんと食べなきゃ、ほら食べさせてあげるから」
「裸のままでいたら風邪引くよ？」
「起こしてあげるから寝ていいよ」
口を開けば、
北斗、樹、
互いに呼び合い続ける始末
そんな俺たちを見て年長者の高地は、うるせえ！と怒っていたけど
俺にとって樹は特別で、そして何故か樹にとっても俺は特別らしい
「北斗、お前今日何の日か知ってる？」
「逆に樹は何の日か覚えてる？」
当たり前、
そう笑った樹に、せーので言お！と返す
「「せーの、」」
「俺の入所日」
「初めて樹と遊んだ日」
「…え、思ってたのと全然違った」
「だって4月20日俺の入所日じゃん」
「でも2人の思い出的には初めて遊んだ日って感じじゃん」
たしかに樹の入所日だけど、
でも俺にとっては初めて2人で出かけた大切な記念日だ
楽しくて照れ臭くて嬉しくて恥ずかしくて
そんな気持ちを抱えた中学生の頃の自分を思い出して、口元がニヤついた
「何笑ってんの北斗」
「なんでもない、てかどしたの高地」
着替えてくる〜と言って居なくなった樹と入れ替わるように楽屋に入ってきた高地は
俺の顔を見るなり顔を顰めた
「また樹が言ってんなと思っただけ」
「何を？」
「“俺の北斗が可愛くてどうしよー”って」
樹の物真似をしながら、近くにある上着を抱きしめる高地
「何それ」
「いつも言ってるじゃん樹」
え？
いや特別扱いされてる自覚はあったけど、
そんな可愛い可愛い言われてる自覚はなかった
「俺の前ではいつも言ってるけど。
“北斗が可愛いどうしよう、お前手出すんじゃねえぞ”って」
「…何それ」
「聞いといて照れるなよ」
コツン、と額に高地の拳が当たる
手出されたのはこっちだっつーの、
そう呟いた高地に視線を移した
「可愛い弟に手出されたってこと」
「…手は出されてない」
「は！？あんないちゃついてるくせに手出されてねえの？」
手、出すって…
どこからを言うのだろうか
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
