阿諛 “red” ページ36
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side black
「ヘヘっ、」
テレビを見ながら笑う君、
を見ながら笑えない俺
ソファに座って二人で寛ぐ時間は何物にも変え難いくらい大切だけど、
その時間をただテレビを見て過ごしてしまうのが少し寂しい
「ほら見てよこれ」
指差した先には大きく光る海鮮丼を自分の顔の横に持って来て「同じ大きさ！」と話す京本の姿
「全然大きさ違うし、へへっ」
京本のことでそんな笑う…？
今日俺のこと何回見た…？
俺にその笑顔見せた…？
ぐるぐると考えれば考えるほど負の感情でいっぱいになって、頭を横に強く振った
その流れで君の手を掴み指を絡ませる
「どうしたの？」
「…なんでもない」
これが俺の精一杯の構ってアピール
絡めた指を膝に持って来てそのまま両手で包む
クリームパンみたいなんて笑われてたけど、
でもやっぱりこの手は俺をいつでも見つけて引っ張ってくれる大きな手に感じる
「北斗の手綺麗だね？」
「…そんなことないよ」
口から出るのは可愛くない言葉だけ
口を尖らせたままいれば、隣からくふっと笑う声が聞こえる
その声に反応して君を見てもその視線はテレビのまま
…なんだ、テレビ見て笑ったのか
寂しいのに甘えられない自分が嫌いで、
とりあえずこの場を離れようと手を離そうとする
…離れない
「ジェシー俺自分の部屋行くから」
「んー…」
ちらっと視線を寄越したかと思えば、
そのまま手を引かれ立ったはずの俺は君の隣に逆戻り
「…ジェシー？」
「なあに？」
「テレビ、見ないの？」
「見るよ。北斗も一緒に見よう」
ほら、と指差された先には相変わらず京本が映っている
何もう俺見なくてもいいじゃん
そう思うのに席を立てないのは、ジェシーに背後からしっかりホールドされてるから
時折頭の上から笑い声が漏れ聞こえてくるけど
それ以外はやっぱり相手にしてくれない
もういいよ、
いっぱい体重かけてやる
背もたれ代わりにジェシーに寄りかかれば、
「あったかくていい匂いする…」
と言いながらさらにきつく抱きしめられる
「北斗の匂い好き…」
「なんだろ、柔軟剤かな」
「多分柔軟剤と…あとちょっと北斗の汗」
「な…！そ、そんな臭いの俺！」
くんくんと自分を嗅いでみてもほぼ無臭
鼻が慣れちゃってるんだきっと
「臭くないよ、むしろ興奮する」
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
