許されたい (ページ8)

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人間は自分と違うものを排除しようとする。アメリカ人と日本人のハーフである俺は幼い頃から周囲にあまり良い反応をされることはなかった。加えて父親は俺が小学生になる前に事故で他界したので、片親ということもまた周囲の視線が集まる原因の一つとなっていた。

虐められるようなことはなかったが、周囲の視線に気が付かないほど鈍感だったわけでもなく、周囲の視線や声から逃れるように自然と人との距離を取るようになった。それでもほんの少しの希望を持って高校は家から遠いところを選んだ。同じ中学出身の生徒は２人しかいなかったし、どちらも同じクラスにはなったことがなくラッキーだった。

「ジェシー、放課後ボウリング行かない？」

「行く！掃除あるから待ってて！」

高校では周囲からの嫌な視線もほとんどなく放課後や休日にクラスメイトと遊ぶことも増えて家で過ごす時間が少なくなった、そんな時だった。体の弱い母親が病に倒れ入院、数ヶ月もしないうちに息を引き取った。

なぜだか涙は出なくて祖父母の家に引っ越した後もしばらくの間は自分の中にぽっかりと穴が空いたような感覚がして、気を遣ってくれる友人やクラスメイトの視線が幼い頃のそれと重なり再び距離を取るようになってしまった。

「ジェシー、カラオケ行かない？」

「あー、今日用事あるからごめん」

友人の誘いを用事もなく断るのかもう何度目だろう。申し訳なさを感じながらも鞄を肩にかけ人気の少ない場所を探し辿り着いたのは図書室だった。テスト期間以外はほとんど人の来ないここは今の自分にとって物凄く居心地が良かった。

「あの、もう下校時間過ぎてるし
　そろそろ鍵閉めたいんだけど・・・」

「え・・・あ、すみません」

面白そうな小説を手に取り適当な席に座って読み始めると意外と内容が面白くて、気が付いたら下校時間などとっくに過ぎてしまっていたらしい。俺に声をかけてきた黒髪の男を見上げるとグリーンのネクタイをしていて1学年上の先輩であることがすぐにわかる。整った顔立ちだが無表情でじっと見つめられると少し怖くて、真っ黒い瞳から怒りは感じられなかったが、慌てて鞄を肩にかけ立ち上がろうとした俺の手元を先輩は目を細めて覗き込んだ。

「この小説面白いよね、俺も好き」

どこか楽しそうにそう言った先輩の表情に不思議と心が惹かれていき、この人は他にどんな表情を見せるのか興味が湧いた。