計画 ページ8
庁舎に戻ってくると丁度午後の任務が終わる時刻だった。午後の任務が終わると訓練や次の任務のためのプランを練る時間だ。
「明日は××に潜んでる歴史修正主義者側の審神者の暗殺とその本丸の破壊だね。」
「うん。送られてきた位置座標の地形をみると回りが更地で物理的に隠れる場所がない。最初からステルス起動させて対象まで最短で向かわないと。更に対象もかなりの遣い手とデータにあった。」
まぁでもいつもどおりやれれば問題ないだろうと思ったので、会議はお開きにしてそのまま訓練に移行する。
密閉された訓練室の中で薬研藤四郎を握りしめ萌衣と対峙する。息を詰めて右足で踏み切り初撃を放つ。首筋に届く前に横にいなされる。ぐらりと横になった体を蹴りあげられ上に飛ばされた。バク転をして着地すると同時に上から振り下ろされる刃を受け止める。押し込まれる力に逆らわず後ろに下がり一度離れる。
『A、もう一回さっきより大きく跳べ。そのまま突っ込んだ後萌衣の顎を思いっきり蹴り飛ばせ。』
薬研さんの指示に分かりました、と返し大きく跳ぶ。限界まで高く。下にいる萌衣に向かって落ちていく。
ぎゃり、ぎぎんと切り結んだ刃が押し返される前に、
『いち、にのさん!』
ドカッ
薬研さんの掛け声に合わせて足が動く。顎を思い切り蹴り飛ばされた萌衣が体勢を崩し背中から倒れる。
すかさずマウントをとり、首筋に刃を押し当てた。
「あぁ、一本取られちゃった。やっぱりAは強いねぇ。」
「ううん、薬研さんが上手く私を操ってくれたからだよ。それに萌衣の最初の突きをいなしたのも凄かった。無駄が無い感じ。」
「私こそあのときは山姥切さんが動いてくれてなかったらそのまま一本取られてたよ。打刀のリーチの長さがもっと生かせてたらなぁ。」
お互いの問題点を指摘しあって訓練するのは心地が良い。だけど、必ずしも必要なものか、というところについてはいつも疑問に思っていた。暗殺の技術はすでにプログラミングされている。どうしてこの訓練のための時間が必ず必要であるかのように組み込まれているのだろう?
始動してから半年ほどたったが最近はこんな事をよく考える。考える必要性は全くない。
私は、ただ、殺していればいいのだから。
どうしてこんなことを考えるのかという困惑も訳を知りたいという好奇心も必要がない。
考えなくて良い。
私はただの機械なのだから。
全て無駄だ。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きつね | 作成日時:2019年5月12日 16時