鴉の学校と廃れた花園2 (ページ26)

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『ガキん時の話じゃねえか』
芹「関係ねえ」
『お前まだ覚えてたんだな』

ガキの頃のあたしは泣き虫だった
いじめられて泣くことなんてしょっちゅうで、その度に多摩雄が仕返ししに行き、相手が謝るまでボコボコにしてた

なんつーガキ大将だよと思うけど、当時のあたしからすりゃヒーローそのものだった

あんまりにもあたしがやられっぱなしだから、我慢ならなくなった多摩雄がほぼ無理やりさせた約束

芹「お前が負けても俺が勝てばお前も勝ちだ」

どっちかが負けてもどっちかが勝てばそれは2人の勝利

芹「だからお前が負けたら俺も負けだ」

逆にどっちかが負けりゃ2人とも負け

芹「でも俺は負けたくねえからな、意地でも勝て！」

ガキらしい無茶苦茶な言い分だけどその言葉は充分あたしの力となって、どんな格上だろうが勝つまでやるようになった
あたしのヒーローが自分のせいで負けを見るなんて絶対許せない

人はそれを強いって評価するけど若干違う
負けらんねえ、負けちゃいけねえってだけ

おかげであたしの喧嘩は綺麗なもんじゃねえ、毎回傷だらけ、血まみれになることだってある
1発で綺麗に勝てりゃ苦労しねえんだけどな
そう簡単にゃいかねえんだこれが

芹「テメェで言ったこと忘れちゃいねえよ」
『ハハッ…そりゃ最強だな』

今でこそ柄の悪い不良にしか見えねえが、あたしにとっちゃ多摩雄は昔からずっとヒーローだ
それだけは変わらない

明「ただいまー」
辰「飯買ってきたぞー」

懐かしい話を思い出してると、玄関がガチャガチャ言って2人が帰ってきた
ほどなくしてドアを開けたアスカと目が合う

『よぉ』

なんとなく気が引けて遠慮がちに目覚めの挨拶をすると、荷物ぶん投げてあたしに飛びついてきた

『〜っ、イッテェ…！お前、こっちは大怪我してんだぞ！」

ただでさえ動くのもきついのに細身とは言え人間1人突っ込んできてみろ
痛えなんてもんじゃねえ、また意識飛んじまうかと思った