14-4 ページ6
翌日
SHINO'sのコックコートを着た創真を見て、四宮が無言で立ち尽くしていた。
「意外と違和感ねぇな…コックコート。笑ってやろうと思ってたのによ」
「意外とって何すか」
そして今度はAをまじまじと見つめる四宮。
「一ノ宮は…何着ても似合うな…」
「シェフ、それセクハラですよ…A、今日はよろしくね？」
『唯さん！よろしくお願いします！』
「Bonjour！ユキヒラ、指示してた作業は済んでるナ？」
「うす。皮むきとオマール海老のブイヨン作り、蛸と大根は半日マリネ済みっす。」
そして二人は、壁に貼られたコース表を確認し、流れを頭に叩き込んでゆく。
やがて時は経ち、最初のお客さんが入店した。
その瞬間、厨房は異様なまでの緊張感が立ち込める。
「お客様が着席された。行くぞ！」
「「Oui Chef」」
四宮の合図と共に、従業員達は驚異的なスピードで調理を開始した。
それに反して、ナイフの音と鍋の煮立つ音しか聞こえないほど静かであった。
些細な音の変化も聞き逃さない、正にプロの仕事である。
「ユキヒラ！遅れないで。そっちの白身魚の出汁を静かに漉して。急いで！」
「はい！」
「ユキヒラ！ミルポワは！？」
「ッすみません！まだです！」
研ぎ澄まされた戦場の中で、あまりの仕事量に圧倒されてゆく創真。
「幸平、すぐミルポワに取り掛かれ。リュシ！1番卓の魚料理を先に！アベル、幸平のミスの尻拭いをしてやれ！」
「Oui Chef」
「言っておくが俺はまだ…君をチームの一員として認めてはいない」
「アベル…」
そんなやり取りを、ちょうど厨房にいたAも聞いていた。
「調理場の流れを滞らせる者は必要ない。俺はSHINO'sTOKYOの料理長だ。
所詮君は研修生なんだ、一軍に割って入ろうなんて思い上がるな！分かったら立場を弁えて…」
「すみませんすぐ戻ります！」
そう冷たい叱責をくらった創真だが、頭を下げてすぐに持ち場へと戻った。
そんな姿を見て、自分も全力を尽くそうと意気込むA。
「一ノ宮！」
するとその時、四宮に呼び止められた。
「例のやつ、始めてくれ！」
『はい！』
「「…？」」
そんなやり取りに他の従業員たちは首をかしげる。
だがすぐに、その正体が明らかとなった。
「ピアノ…？！」
「まさか、弾いているのって…」
「Aっすね！！」
やがて曲が終わると、ホールからは喝采が沸き起こる。
極上の料理に豊かな音楽。
いつしか店内は一流の空間が形成されていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 297人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
篠。(プロフ) - ゆかりさん» タクミくんもカッコいいですよね〜(*´ー｀*)後に活躍してもらいますね！！笑 (2019年9月17日 15時) (
レス) id: 77342cf851 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 篠。さん» タクミくんとの絡みもきになるところです！ (2019年9月16日 22時) (レス) id: 9654438337 (このIDを非表示/違反報告)
篠。(プロフ) - ゆかりさん» これからオリジナル要素が濃くなるので、原作と流れは同じですが、表現の方法や原作に描かれていない場面の設定などによって、見え方が変わってくると思います！楽しんでいただけると嬉しいです(*´・∀・｀*) (2019年9月14日 19時) (レス) id: 77342cf851 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 原作と少し違うのが良いです！ (2019年9月13日 22時) (レス) id: 9654438337 (このIDを非表示/違反報告)
篠。(プロフ) - ゆかりさん» ふふ、気合い入れて頑張りまーす(*￣ー￣) (2019年9月8日 22時) (レス) id: 77342cf851 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：篠 | 作成日時：2019年6月15日 23時
