109話 ページ10
岳斗side
「悪りぃが、そいつはダメだ」
「え……?」
何を言い出すのかと真冬は驚きの表情を出す。
そうなるのも無理はない、今までの俺を考えてみれば、俺の口から「ダメだ」なんて出るはずも無いだろう。
だが、真冬を止める理由がそこにはちゃんとあった。
「あいつらの実力は俺達よりも遥かに上だ。
どこを刺せば一発で死ぬかも、どうすれば相手の懐に入れるのかも熟知してる動きだった。俺達よりも相当長い間訓練してねぇと出来ねぇ。
つまり、あいつらは俺達よりも経験者って訳だ」
「でも、ほっといたらまた犠牲者が……!」
「相手は俺達よりもランクが上なブレイダー達を何人も葬ったバケモンだ。
しかも、見たところあいつらはラヴァルダート教団の幹部的存在……
あんな奴等があと3人も居るんだぞ? それを最下級ブレイダーのお前が相手に出来んのか?」
ドスの効いた声を出し、相手に噛み付く様に真冬を睨みつける。
真冬は今回ばかりは本気で怒ってると思ったのか、少し声を震わせながら「ごめんなさい……」と謝った。
真冬は昔から正義感が強い。
俺みたいに自分の意思を優先するような奴とは違って、困ってる人を見捨てる事ができない、一人でも多く助けてあげたい、そう言う思いが強いが為に、どんな面倒ごとでも首を突っ込もうとする。
そういう正義感が強い奴ほど心は脆い。ちょんと突くだけで、ジェンガの様にガラガラと心は崩れ落ちる。
だからこそ、俺は真冬だけにそんな事をさせるわけにはいかない。
「だから、俺も一緒にやってやるよ」
「えっ……?」
「俺だってあいつらの事、ずっと気になってたんだ。あいつらの秘密を暴いてやりたいって思ってた。まぁ、お前みたいに困ってる人の為にって訳じゃなく、100%自分の為だけどな」
「でも、私の勝手な理由でお兄ちゃんを巻き込む訳には……」
真冬に歩み寄り、「黙らっしゃい」と言いながら真冬の頭を軽くチョップする。
「俺がお前を巻き込むんだよ。俺はもうとっくに問題児扱いされてんだ。お前はそんな問題児に巻き込まれたただの被害者だ。そうすりゃ、おっさんも「止めても無駄なの知ってたから仕方ねぇな」って笑って許してくれんだろうよ」
「お兄ちゃん……」
「ほら、さっさと家に帰るぞ。永也とソラも腹空かせて待ってるだろうからな」
「……うん、そうだね。今日の夕飯、何にしよっかな〜」
俺達は他愛のない話をしながら、小学生の時の様に、手を繋いで家へと帰っていった。
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