108話 岳斗side ページ9
岳斗side
「ねぇ、お兄ちゃん。聖さんになんであんな事聞いたの？ 」
空がオレンジ色に染まり、いつも通りの家への帰路を真冬と共に歩いて居ると、真冬は俺の顔を覗き込むように体を少し前に倒しながらそう問いかけた。
「そんなもんただ気になったからに決まってんだろ。特に意味なんてねぇよ」
「嘘だ、何か理由がなきゃあそこまで聖さんを追い詰める様なことは言わないでしょ？ 聖さんのリクトルに何か異変があったから、あんなことしたんだよね」
「……勘付かれてたか」
「お兄ちゃんの妹だもん、そのぐらい隠したってわかるよ」
真冬は成績は中の下ではあるが、勘だけはとにかく鋭い。そこがたまに厄介なんだよな。
「……『リミテッドクライン』……あの魔従の人達、ブレイダー殺し達のことをそう言ってたよね。聖さんはリミテッドクラインと何か関係があるってことなの？ 」
「多分な……あの涼子って奴に言われた時と、俺があいつの名前を出した時、聖のリクトルは揺らいでいた。動揺してたんだろう。
何なのかはわかんねぇが、あいつは何かを恐れてるのは間違いねぇな」
「……リミテッドクライン……ラヴァルダート教団……」
真冬は突然足を止め、その場に立ち止まる。
急にどうしたのかと思い、俺は真冬の方に振り返った。
「真冬？ 急にどうしたんだ？」
「……お兄ちゃん、このまま見てるだけで良いのかな？」
「はぁ？」
立ち止まって急に何を言い出すのかと思い、つい顔が強張る。
「だって、彼奴らは他のブレイダーの人達を何人も殺して、魔隆を操って民間人を襲ってる外道なんだよ？ それに、私達の仲間も関わってる事なのかもしれないのなら、やっぱりこのまま黙って指咥えて見てるわけにはいかないよ」
真冬は自分のスクールバッグをギュッと握りしめる。
「私は困ってる人を助ける為にブレイダーになったんだ。危険かもしれないけど……それでも、私は何もせずにはいたくない……！」
「真冬……」
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