54話 ページ5
岳斗side
「個人ランクがB級である俺なら倒せるが……チームのランクがD級である以上、あいつは討伐対象外になる。C級ブレイダーの援護を要請しなければ____」
疾風が右手首に付けた白いバングルにあるボタンを押そうとする。
だがその瞬間、俺は疾風の横を通り過ぎ、魔隆を追うように大通りに出ようとした。
「! 待てっ!! 」
走っている俺の右腕を疾風に強く掴まれる。
「一体何をする気だ!! 」
「決まってんだろ、魔隆を追う!! 」
「何を言ってる、あいつは消えたんだぞ!! 」
「いや、消えちゃいねぇ! 姿を消したんだ!! あいつはステルス能力を使って透明化しているが、リクトルだけは薄くしてるだけで消し切れてねぇ!! 」
「……お前……まさかリクトルが……だが、新米の奴にが敵う魔隆じゃない! C級ブレイダーの応援を仰ぐ!! だからD級であるお前は大人しく____」
「そんなの待ってたらあの子が死んじまうかも知れねぇだろ!! 困ってる人が居たら救うのがブレイダーじゃねぇのかよ!!! 」
俺の気迫に驚き、腕を掴む力が一瞬緩まる。
その隙を見て疾風の腕を振り剥がし、大通りへと飛び出した。
「園崎っ!! 」
屋根を飛び移っている魔隆を追いながら、通行人の間を掻き分けて進んでいく。
「逃してたまるかよ!! 」
今の俺のスピードじゃあいつに追いつく事が出来ねぇ。しかもあいつは屋根の上にいる。
人間の脚力じゃ、あそこまで飛ぶ事は出来ない。どうしたら……
何かないかと前を見ると、道路のガードレールに寄りかかった運搬業者の男が缶コーヒーを飲んでるのを見つける。
そしてその男の側にある一台のトラックが目に止まった。
「あれだ……! 」
運搬業者の男に駆け寄り、肩を力強く掴むと、驚いた男は缶コーヒーを地面に落とす。
「へっ!? 」
「おいお前! 今すぐそのトラック動かしてくれ!! 」
「なっ、なんだよお前!! 」
「いいから早くしろっ!! 魔隆が近くに居るんだ!! 」
「ま、魔隆っ……!? 」
「早くトラックを出せっ! 命がかかってんだ!! 」
男は怯えながらも直ぐにトラックの運転席に駆け込み、あたふたしながらシートベルトを着用する。
俺は運転席には行かずに運転席の屋根に登ると、通行人は足を止めてザワザワと騒ぎ出した。
すると、群れている人混みの中から、疾風が身を乗り出し、俺の姿を見て目を見開いた。
「園崎っ! 今すぐそこから降りろ! これ以上身勝手な事はするな!! 」
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