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ひんやりとした何かが頰に当たって気持ち良いーーー
混濁した意識の中で、真緒は心地よい冷たさを感じていた。
「ーーー…?」
白い天井、そして白いカーテン。
医務室にいることを察知した真緒は、身体を起こした。
「ーー嗚呼、目を覚ましましたか。薬は飲めますね?」
鼻がつまってうまく喋れない。
真緒の様子に、マダムは溜息をついた。
「全く…そんなに悪くなるまで放っておく人がいますか」
「しゅみ、まぜん…」
呆れた顔のマダムの手には元気爆発薬で、飲みたくないなんて我儘は通りそうになかった。
(嫌だ…)
何しろこれは、体調は回復するが耳から数時間煙が出っぱなしなのだ。
真緒はゴブレットを受け取り、勢いよく飲み干した。
「友人にお礼を言っておくのですよーーーMr.マルフォイに」
「えっ?」
思いもよらぬ人物の名前が挙がり、真緒はきょとんとした。
「階段から落っこちた貴女を受け止めてくれたんですよ?次からはこうなる前に来なさい。さあ、それを飲み終えたらさっさと戻る」
病人相手にひどい、と思ったが、確かに鼻も熱っぽさも頭痛も消えている。
真緒はお礼を言うと、ベッドから降りる。
「Ms.土御門、忘れ物ですよ!」
医務室を退室しかけた真緒の手に、マダムは作り物の薔薇の花をぽんと載せた。
作り物の薔薇は見覚えのある赤いハンカチで出来ている。
「あ、ありがとうございます」
(ドラコに渡したハンカチだ…)
真緒は器用に薔薇のお花に作られたそれを、そっとポケットに入れてドラコを探し始めた。
きょろきょろと動き回っていた真緒は、階段の向こう側にいるプラチナブロンドを見つけて、早足でそちらに向かった。
ドラコは、やってくる真緒に気付くと、くるりと背を向け、足早に歩き出す。
「待って!」
呼びかけても振り返らないドラコにやっとのことで追いつき腕を掴んだ。
だが、ドラコは乱暴にそれを振りほどいた。
「僕には話しかけるなと言っておいて、自分は話しかけるのか」
「ごめんなさい、謝るからーー待って、行かないで、っきいて」
真緒が息を切らしてそういうと、ドラコは廊下にもたれかかって腕を組み、鼻を鳴らした。
「少しならーー聞いてやっても良い」
偉そうな態度は増大しており、よく見たらこの廊下は血文字のあった場所に近い。
真緒は唇をきゅっと結んだ。
「早くしてくれよ、僕は暇じゃないんでね」
「私を、医務室に運んでくれたのは、ドラコ?」
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作者名:M.S | 作成日時:2019年10月13日 11時