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真緒は何だか照れたようにドラコを見つめている。
その視線がむず痒くて、ドラコは口角を上げて揶揄った。
「…何だ、一生階段に足を突っ込んだままが良いのかい?」
「ちがっーー…早く持ち上げてよ」
真緒は頬を膨らませてドラコを睨んだが、全く怖くない。
ドラコは肩を竦め、真緒のウエストに腕を回した。
(細い、それになんだか、柔らかい…)
頭の中で疚しい感想が湧き上がるが、すぐさま打ち消す。
ほっそりとしたウエストを抱きしめるように持ち上げると、彼女はドラコの首に腕を回す。
ドラコの頰を黒髪が擽り、石鹸の香りが鼻腔をかすめた。
女の子らしい香りでどきりとしたドラコの頰に、赤みがさす。
「っと…よし、大丈夫か?」
「う、ん…」
無事におろして声をかけると、黒曜石から涙がぽろぽろと落ちていた。
「おい、泣くな。ーー真緒、ほら顔を拭いて」
「うん…ありが、と」
慌てたドラコが真緒にハンカチを渡すと、真緒は涙を拭く。
その様子が何とも庇護欲をかき立て、ドラコは頰に熱が集まるのを感じた。
「それと、これ」
バレッタを差し出すと、真緒は目を丸くしてドラコを見上げた。
「何でドラコが…」
「あー…拾った、近くで。そしたら君がいてーー…汽車のと同じだったのを思い出した」
探し回ったことを伝えるのは気恥ずかしくて、ドラコは適当に言い繕った。
適当過ぎた気もしたが、真緒は全く気づかなかったらしく「ありがとう!」と、ドラコの片手をぎゅっと小さな両手で包み込んだ。
握られていない方の手で、ドラコは頬をかいて、目を泳がせた。
「ま、僕が偶然通りかかったことに感謝するんだね」
「うんっ」
ドラコは恥ずかしさでどうにかなりそうだったが、真緒がにこにこするので、取り敢えず平静を装った。
「そういえばドラコは、どうしてこんなところに?」
「僕?ーーー僕は今日選抜試験でね」
「選抜試験?」
いまいち分かっていない様子の真緒に、クィディッチの選手の選抜試験だと伝えると随分驚いていた。
あっという間にグリフィンドール寮の前に着いた。
「じゃあ、次からは階段には気をつけるんだね」
ドラコは片手を上げて立ち去りかけながら言った。
「でもーードラコが助けてくれるでしょ?」
少し離れたところから真緒が言った言葉に、ドラコは完全に頰を染めた。
「送ってくれて、ありがとう」
お礼の言葉を尻目に、足早に立ち去った。
fin.3
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作者名:M.S | 作成日時:2019年10月13日 11時