検索窓
今日:28 hit、昨日:27 hit、合計:207,493 hit

3-2 ページ13

よく見ると、髪も少し乱れている。
(走ったのかな…?)


「引っ張り上げるしかないか…おい、荷物を貸せ」


言われるがままに鞄を差し出すと、ドラコはそっと床に置いた。

「クラッブとゴイルは?」
「いつも一緒にいるわけじゃない」


腕捲りをしたドラコが真緒に向き直った。
アイスグレーが真緒の瞳を捉え、真面目な顔つきに思わず顔が赤くなった。


「…何だ、一生階段に足を突っ込んだままが良いのかい?」
「ちがっーー…早く持ち上げてよ」


真緒は頬を膨らませて、ドラコを睨む。
ドラコは気障ったらしく肩を竦め、真緒のウエストに腕を回した。

真緒はどぎまぎとしながら、ドラコの首に腕を回す。

爽やかな香りがドラコの首筋から香り、真緒の顔は赤くなる。


「っと…よし、大丈夫か?」

「う、ん…」


滲む視界に、目をぱちくりしていると、ドラコが慌てた声でハンカチを真緒の頰に当てた。


「おい、泣くな」


その言葉でようやく自分が泣いていたのだと分かった。


「真緒、ほら顔を拭いて」

「うん…ありが、と」


真緒はドラコのハンカチで涙を拭いた。
ハンカチからも同じ、爽やかな香りがした。

真緒が顔を上げると、何故かドラコの頰がピンクだ。


「それと、これ」


ドラコが差し出してきたのは、真緒のバレッタ。

真緒は目を丸くしてドラコを見上げた。


「何でドラコが…」

「あー…拾った、近くで。そしたら君がいてーー…汽車のと同じだったのを思い出した」

「ありがとう!」


真緒はドラコの手ごとぎゅっと両手で包み込んだ。
ドラコの頰が更にピンクになる。

握られていない方の手で、ドラコは頬をかいて、目を泳がせた。


「ま、僕が偶然通りかかったことに感謝するんだね」
「うんっ」


心細かった真緒にとって、相手が偉そうなドラコでも酷く安心できるものだった。


「そういえばドラコは、どうしてこんなところに?」
「僕?ーーー僕は今日選抜試験でね」
「選抜試験?」

「クィディッチ選手の、選抜だ」

「凄い!どのポジションなの?」

「シーカーさ」


ドラコと会話をしながら、いつの間にかグリフィンドール寮の前に着いていた。


「じゃあ、次からは階段には気をつけるんだね」



そう言ってドラコは片手を上げて、立ち去ろうと背を向ける。


「でもドラコが助けてくれるでしょ?送ってくれて、ありがとう」


ドラコの血色が良くなり、今度こそプラチナブランドは真緒に背を向けた。

3-3→←3-1:王子様と階段



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (85 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
271人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:M.S | 作成日時:2019年10月13日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。