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蘭くんが好きで好きで仕方がなくて、胸の中で抱えきれなくなって溢れた想いが言葉になってその都度漏れる。

この数分で何度「愛してる」と言ったのか。数えきれない程にお互いの名前を呼んで、お互いの愛に溺れる。


何も言わなくたってきっと想いは通じている。

言葉にすることで一人ぼっちだった12年間の空白を蘭くんで埋めている、そんな感覚にまた幸せを覚えた。


もう、何だっていい。

警察が何だろうが、梵天が何だろうが、蘭くんさえいてくれたら何だっていい。

考えたってどうしようもないし、私は私の意思で蘭くんを選んだ。


私は蘭くんが生きている世界のことを何一つ知らない。この先は地獄だと蘭くんは言ったけれど、どの程度の地獄を見ることになるのか想像もつかない。

縁がない世界に一歩ずつ足を踏み入れている自覚は充分にあった。それでも怖くないのはきっと、隣に蘭くんがいてくれるから。


大丈夫、何も心配いらない。

一人で記事を読んだ時は酷く動揺して、莫大な不安に押し潰されそうで泣きながら嘔吐までしたのに。

あれは何だったのかと聞きたいくらい、さっきまでの私はもうどこにもいない。



「…なんか、蘭くん帰ってきたらすごく安心した。」



心地良い温もりを感じながら蘭くんの肩に頭を預ける。優しい手つきでゆっくりと髪を撫でてくれて、こんなこと昔もあったねって思い出に浸った。



「話をしようと思ってたことがあって。」

「何?」



蘭くんが帰ってきたら話をするつもりでいた、12年前の2月22日の真相。どんな言葉が返ってきても、今ならちゃんと聞き入れることが出来る。

あの日を思い出すと胸が苦しくなるけれど、いつまでも気持ちをそこに置いてはいけない。

蘭くんも私も、新しい未来に向かって歩き出したのだから。



「…12年前の話を、えっと…どこから話せばいいのかな…。ごめん…。」

「俺から話してもいい?つーか、俺から話さなきゃいけねえことだから。」



いざその話題を口にすると躊躇いが生まれてしまう。自分の弱さにうんざりしながら、蘭くんの返事に首を縦に振った。

少しの沈黙が流れる。どう話そうか考えているような素振りに急かすことはせず、じっと口が開かれるのを待っていた。



「2006年2月22日、俺は逮捕された。」

「…えっ…?」



単刀直入すぎる予想外の言葉に思わず情けない声が漏れた。

真っ直ぐに私を見つめる瞳が真実を語っていると悟って、私はゆっくりと頷くことしか出来なかった。

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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時

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