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眩しい朝日を背に受けて、横たわる肉の塊と化した元人間を見下す。
スーツの内ポケットから煙草を1本取り出して、ジッポーで火を着けた。燻る紫煙が東京の汚い空気に混ざる。
独特のオイルの匂いは嫌いじゃない。
このゴミを片付けておくように、指示だけ残してその場を後にした。
午前7時、今日も世界は始まりを告げる。
同時に、闇社会に生きる人間は世界に終わりを告げる。
帰って寝たいような、そうでもないような。
とは言っても、一日中よく働いた薄汚い体を一刻も早く綺麗にしたい。
部下が用意した車に乗り込んでアジトに戻れば、何日間徹夜しているのか分からない天才がPCと睨めっこ中。
一瞬だけ俺に視線を寄越したかと思えば、今日は2月22日だなと呟いた。
知っているさ、そんなことくらい。
12年前の今日を思い出しながら静かな廊下を歩く。
途中ですれ違った弟からは「お疲れ」と労いの言葉を掛けられ、お前もなと挨拶を返す。
併設されたシャワールームには誰もいないが、シャワーヘッドからは僅かに水滴が垂れている。
ああ、竜胆が使ったばかりだったのか。
熱いくらいのシャワーを頭から被り、目を伏せた。
2006年2月22日。
忘れもしない、忘れることなど出来ない。
あの日の光景が瞼の裏に甦る。
誰よりも強かったあいつが死んだ。
憧れていた大将の瞼をそっと下ろした時の感触は、今でも指先が覚えている。
抗争後に逮捕され、その2日後には鑑別所に入った。
最低限の衣類しか所持を許されず、当然だが携帯電話の所持は禁止された。
そうして、当時付き合っていた彼女の笑顔が過ぎる。
好きだった。愛していた。こいつしかいないと、そう思えるくらいあいつに溺れていた。
俺が極悪の世代の1人と数えられていることは知っている。
だからきっと、関東事変のことも理解していると信じていた。
翌年、鑑別所から出所した俺は真っ先にあいつと生活していた部屋へと向かった。
ドアを開けて愕然とした。
人が生活している気配が感じられず、よく見たら俺の私物以外全てなくなっていた。
家具のあちこちに埃が積もっていた。
窓際に置かれたテーブルにはいつ書かれたのかも分からない「今までありがとう」の色褪せたメモ。
焦って電話を掛けてみるも、この番号は使われていないと流れた自動音声に思わず携帯を叩き割った。
「A、…。」
逮捕されてから出所するまでの空白の1年の間に、あいつは俺の前から消えてしまった。
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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます！お褒めの言葉、とても嬉しく思います！「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです！これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (
レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました！あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました！どれも最高に良かったです！！更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます！沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです！貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます！めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます！応援してます！頑張ってください！ (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ｋｉｚｕｎａさん» ｋｉｚｕｎａさま、コメントありがとうございます！こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…！ (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れん | 作成日時：2024年2月23日 0時
