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その後は4人でゲーセンを一周して、そろそろ帰ろうかと店外へ出る。
俺の前を歩く葵ちゃんたちは、Aちゃんの腕に抱かれているぬいぐるみの話で盛り上がっていた。
あのキャラクターのうさぎが好きなのだと、些細なことだが知ることが出来てよかった。
「今日は楽しかったー!」
「私も。また遊びに行こうね。」
「約束だよ!じゃあ私、電車だからここでバイバイだね。」
「私は歩きで帰れるから。また明日ね。」
改札前まで一緒に来てくれたAちゃんが小さく手を振る。
見送られると何だか帰り難い気持ちになるなと、胸の奥がもやもやした。
改札を通った兄ちゃんたちの「竜胆ー」と呼ぶ声が背に掛かり、振り返った俺が返事をした。
「Aちゃん送ってくわ。2人は先帰ってて。」
「え、じゃあ私も、むぐっ」
私も行きたいと言い掛けた葵ちゃんの口を兄ちゃんが塞いで、ひらひらと手を振った。
「竜胆に任せるわ。葵帰んぞー♡電車来るから急げー?」
「Aちゃんまた明日ね!竜胆さんよろしくお願いします!」
ホームに電車が来ると案内が入り、慌てて駆け出す2人を見送ってから駅を出た。
「わざわざすみません。でも、1人で帰れますよ。」
「もし万が一があったら寝覚め悪ィし。いいから送らせて。」
「…じゃあ、お願いします。こっちです。」
今日は楽しかった。
高校に入って初めて出来た友達が葵ちゃんでよかった。
また遊びに行きたい。
薄く微笑んでそう話すAちゃんに相槌を打ちながら、歩幅を合わせてゆっくり歩く。
「今度は兄貴が邪魔しないように努力するわ。」
「邪魔だなんて思ってないです。竜胆さんもいい人ですし、人は見かけによらないですね。」
「それどういう意味だよ。」
「冗談です。」
半笑いでAちゃんの頭の上に手を置いて、髪を掻き乱す。
ごめんなさいと笑いながら謝るAちゃん。
急に触れられて嫌だったかもと少し後悔するが、艶のある黒髪から覗く耳が少し赤くなっていたような気がした。
「葵ちゃんの前ではクールなのに、笑うと可愛いじゃん。」
「からかわないでください。」
「なに、照れてんの?」
「違います…!」
ふいと顔を背けて拗ねたような仕草をする。
歳は俺と少ししか違わないのに子供っぽいなと笑った。
「怒りますよ…!」
「全然怖くねーから。」
こんな風にふざけ合える奴が出来たのは随分と久しぶりかもしれない。
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れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらにも遊びに来ていただけて嬉しいです!好みだなんて勿体無いお言葉…!更新の励みになります😭また遊びにいらしてくださいませ! (2月25日 23時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
kizuna(プロフ) - 本当に作者様の作るお話が凄く好みで最高です!これからも頑張って下さい! (2月25日 19時) (レス) @page31 id: 0b38a899d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年1月30日 21時