今はまだ−− side Katagiri ページ9
『さとちゃん、近い内にきっと驚くことがあるわよ!』
そんなことを電話で聞いたのは一ヶ月ほど前だったか。
あいつとの定期連絡のような電話は、毎日から二日に一度になり、三日、四日と伸びてやがて毎週土曜の夜になって最後には一ヶ月に一度になった。
そんなに話すこともねぇし、お互いの生活も変われば仕方ないことだった。
電話なんて、しようと思えばいつでも出来るものだと考えていた。でも、俺と違ってあいつはごく普通の真面目なやつだ、学校サボったりしねぇしテスト期間は勉強してるし……時間はどんどん限られて行った。
『さとちゃんも勉強しなくていいの?』
片「あ?開久で勉強なんかしてたら逆に舐められんだろうが」
『何それ、面白いけど高校出たらどうするのよ、強いだけじゃ就職できないよ!』
笑いながら言うあいつに、それもそうだななんて思わされたりした。けど今更もう勉強したって遅ぇし、取り掛かることは無かった。
『まぁ体力仕事ならできるかもね!』
なんてあいつも言っていたし。
『ねぇさとちゃん、彼女できた?』
片「女なんか構ってる暇はねぇよ」
たまに聞かれるお決まりの質問には、そう答えることにしていた。なんの気なしの質問が、柄にもなく寂しく感じられた。
お前はどうなんだ−−
何度も言葉にしかけたが、それを口にすることはなかった。出来なかったという方が正しいか。
中坊の時に会って以来、あいつと顔を合わせることはなかった。俺から会いに行くことも、あいつから会いに来ることもなかった。
唯一、高校の入学式の写真が送られてきて、それを見たくらいだった。写真の中で笑うAは俺よりずっと大人に見えた。
気が付けば俺たちを繋ぐのは、たった1本の電話だけだ。いつ切れてもおかしくなかったが、そうはならなかった。
あの日は、思えばその電話の日だった。放課後、といっても滅多に授業なんざ出ないが、いつもの裏庭でぼんやりとしていた。いや、実際はその日の電話で話す内容を考えていた。
いつも大体はAが一方的に話している時間が長いが、俺からの話題もないと怒られるからな……。
そんな時に相良が連れてきた女の顔を見て、俺は二つの意味でひどく驚いた。
相「おい、ふざけた女が校内うろついてたから捕まえてきたぞ!」
片「女……?って、おい、相良」
そこにはいるはずのない女がいた、俺は自分の目を一瞬疑ったが、制服も写真で見たのと同じだ、間違いない。
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彼方(プロフ) - なーなーさん» 初めまして、コメントありがとうございます!幼少期の片桐くんの可愛さを受け入れていただいて嬉しいです(*^ω^*)可愛くしすぎてかっこいい片桐くんが好きな方に怒られるんじゃと不安でした笑。今後もこの作品をよろしくお願いします! (2018年12月28日 19時) (レス) id: 93a2639ec6 (このIDを非表示/違反報告)
なーなー - はじめまして!もう本当、読みながらニヤニヤしてますw 幼少期の智司可愛すぎか( ˙-˙ ) (2018年12月27日 23時) (レス) id: ceacf0dbdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 | 作成日時:2018年12月17日 15時