約束≠思い込み ページ5
あの後のことがよく思い出せない。
荷解きは無事に終わった、なんだかんだ言いながら相良はきちんと手伝ってくれたし、私が作った夕飯を二人は気持ちいいくらいの食いっぷりで平らげてくれた。
そして、帰り際。ニヤニヤと笑みを浮かべながら私の肩をぽんっと叩いた相良は言った。
相「ごしゅーしょーさま、くくっ」
私はそれに言い返すことも、殴り返すことも出来ず、ただ二人を引きつった笑顔で見送った。
そう、彼は本当にすっかり綺麗さっぱり約束のことなど忘れていたのだ。
『はぁ……』
重い気持ちで学校へ向かう。体まで重たくなったみたいに、足が進まない。
『わぷっ』
下を向いて歩いていたら、どんっと何かにぶつかった。商店街の真ん中に、壁か柱でも立っているのか。
『はっ、ごめんなさい!』
もちろんそんなはずも無く、私がぶつかったのは人だった。
青い制服を纏ったその人は振り返ると、突然胸のあたりを抑えて「はぅあっ」と声を上げた。
それを見て隣にいた私と同じくらいの背丈の小さな男の子が呆れたようにため息をついた。
谷「あぁ、また始まった」
『え、ちょっと大丈夫ですか?』
そう声をかけると、はっと気がついた彼はニカッと豪快な笑顔を見せたあと、咳払いして妙にカッコつけた声で自己紹介を始めた。
今「大丈夫ですとも、お嬢さん!俺は今井、今井勝俊17歳、血液型はO型です、お嬢さんのお名前は……?」
『わ、私はAA18歳、血液型はAB型よ』
圧に押されて私も自己紹介をしてしまった。ナンパ、というような空気ではないけれど、なんだか面白い子に捕まってしまった。
今「Aさん……!なんて美しいお名前なんだぁ!!」
『い、今井くん声が大きいわ』
谷「今井さん!そんなデカい声出すと女の子がビビって逃げちゃいますよ!」
いや、ビビってはいないけど。
心の中でそう思うも、今井くんは「そ、そうかぁ!」とまた大きい声で叫んで小さい男の子に怒られている。
ほんとに面白い子達だなぁ。
『じゃあ今井くん、私は学校に行かないとだからまたね』
今「はっ!わっ分かりました!また、また必ずお会いしましょう!!」
背後で今井くんがでかい声で私の名前を叫んでいる。ふふって笑いが零れるも、私の心が晴れることはなかった。
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彼方(プロフ) - なーなーさん» 初めまして、コメントありがとうございます!幼少期の片桐くんの可愛さを受け入れていただいて嬉しいです(*^ω^*)可愛くしすぎてかっこいい片桐くんが好きな方に怒られるんじゃと不安でした笑。今後もこの作品をよろしくお願いします! (2018年12月28日 19時) (レス) id: 93a2639ec6 (このIDを非表示/違反報告)
なーなー - はじめまして!もう本当、読みながらニヤニヤしてますw 幼少期の智司可愛すぎか( ˙-˙ ) (2018年12月27日 23時) (レス) id: ceacf0dbdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 | 作成日時:2018年12月17日 15時