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そう言われて、ようやく私は自分が泣いているということに気が付かされた。制服の袖で涙を拭っても拭っても、それは止まることがない。
突き付けられた気がした、今の彼と私の生きる場所の違いを……。
相「……おい、行くぞ」
『ちょ、ちょっと何するのよ!』
初めて会った時と同じように相良に腕を捕まれ、引き摺られるように外に出る。まだ代金を支払っていないのに、マスターは私達を止めることはなかった。
この前みたいに相良を殴り飛ばす気持ちが湧き上がって来なかったのは、幾分か掴む力が優しかったからかもしれない。
腕を掴まれたまま商店街を抜け、向かっているのが私の家の方向だというのは分かった。多分、伝言だけでなく私を家まで送ることもお使いの一つなんだろう。
『いい加減離しなさいよ!』
相「うるせぇな!離してほしいならさっさと歩きやがれ!」
相良の言う通り、誰かに引っ張ってもらわなければ、確かに私は立ち止まってしまうだろう。まだ涙は止まらないし、家に帰ってもひとりぼっちだから。
相「こんなことでいちいち泣いてたらよぉ、開久の頭の女になるのは諦めた方がいいぜ?」
『……相良、あんた案外馬鹿なのね』
相「あぁ!?」
『彼女って称号があったら、こんなに不安にならないわ……』
私はただの幼馴染で、友達より少し上くらいの存在。けして特別ではなくて、たまたま小さい時から近くに住んでいて、長い時間過ごしただけ。そう全て過去の話なの。
今の彼を私はなにも知らない。私は今の自分を知ってもらう前に、今の彼を知るべきだった。
『正直言えば、私は開久の頭の女になんてなりたい訳じゃない。さとちゃんがたまたま頭になっちゃっただけで、別に私はそれを望んだ訳じゃないもの……』
相「……お前ら、めんどくせぇな」
『あ?』
相「めんどくせぇっつったんだよ!ほらもう家着いたぞ、さっさと入れ俺も帰りてぇんだよ!」
うんざり、そんな言葉がぴったりな顔で相良はしっしっと手で追いやるような仕草をする。それに腹は立ったけど、もう噛み付いていく元気はなかった。
『相良……』
相「なんだよ、早く閉めろよ」
『ありがと』
相「……おう」
その後、お風呂でまた散々泣いて、ベッドに飛び込んでそのまま眠りについた。
夢もみないまま、朝はやってきたけれど、私はとても起き上がる気になれなくて、この日私は生まれて初めて学校をサボった。
夕方になったら、昨日の料金だけ払いに行こう。
そう思って、私は再び目を閉じた。
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彼方(プロフ) - なーなーさん» 初めまして、コメントありがとうございます!幼少期の片桐くんの可愛さを受け入れていただいて嬉しいです(*^ω^*)可愛くしすぎてかっこいい片桐くんが好きな方に怒られるんじゃと不安でした笑。今後もこの作品をよろしくお願いします! (2018年12月28日 19時) (レス) id: 93a2639ec6 (このIDを非表示/違反報告)
なーなー - はじめまして!もう本当、読みながらニヤニヤしてますw 幼少期の智司可愛すぎか( ˙-˙ ) (2018年12月27日 23時) (レス) id: ceacf0dbdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 | 作成日時:2018年12月17日 15時