隣の君は。

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紫「 Aちゃん、ちょっといい？ 」



さっきまで平野くんにムカついてたのに
名前を呼ばれたら全部どうでもよくなっちゃって。


素直に言うことを聞く私は
やっぱりバカだ。




『 え、岸？ 』


でも、驚いたことに、
岸がそれを遮るように私の腕を掴んだ。




優「 行くな 」


俯いているから、
どんな顔をしてるか分かんないけど

いつもより少し声が低かった。




『 え？岸、何言ってんの？ 』


優「 もう百瀬に傷ついてほしくない 」



そのまま私の腕をぐっと引いて
自分の胸の中で抱きしめる岸。




『 ちょ、岸……っ 』


こんなとこ、見られたくなかった、
平野くんには。




ただでさえ、平野くんには
私の想いなんて、届いてないのに。

これじゃ、もっと勘違いされちゃう。




紫「 傷つく、ってどういうこと？ 」


でも、平野くんの反応は
それ以上に、悲しかった。切なかった。


気付いてほしい、けど
気付かれても困る、
そんな葛藤が胸を締め付ける。




優「 は？お前まじで言ってんの？ 」


紫「 え… 」



そんな平野くんに、
私の代わりに岸が突っかかって
平野くんは顔をしかめてしまった。




優「 百瀬は、お前の……______ 『 ちょ、岸！もういいから！ 』



今にも言ってしまいそうな勢いの岸を
無理矢理止めて、腕を引っ張る。


ようやく私のことを捉えた岸の目が
ハッと見開いた。




優「 ごめん…… 」


岸はそう言うと、

私の腕を掴んで「 帰るぞ 」と
部屋の方に歩き出した。



後ろを振り返って
ポカンと立ち尽くす平野くんを見つめたけど、
引き止めてはくれなかった。

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