隣の君は。 (ページ21)

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隣 .21 ページ21

花火の音、みんなの笑い声、

まるで青春の1ページを切り取ったように
キラキラしてて、楽しい。

優「まさに合宿って感じだよな！」

勇「岸くん夢見すぎ」

優「いや現実じゃねーか」

玄「じんぐーじ！線香花火しよー！」

亜「私も勇太と線香花火する！」

モテモテな神宮寺くんが
亜美先輩と岩橋くんに連れてかれて、

必然的に2人きりになる私と岸。

2人きりはさすがに気まずくて
少しの沈黙が辛い。

優「俺らも、線香花火やっとく？」

『やる！』

張り切って岸の分の花火も取って
渡したら、優しく微笑まれて

その笑顔が、あまりにも優しすぎたから
一瞬、固まってしまった。けど。

『ほ、ほら、早くやろ！』

岸から逃げるように石段に腰を下ろした。

優「はいはい」

と、岸が私の隣に座って、
花火に火をつけてくれる。

優「なあ、先に火が消えた方が
相手の言うこと聞く、って賭けしない？」

『あ、いいねそれ！絶対勝つ！』

優「俺も負けねえし！」

線香花火の火を見つめながら、
隣の岸に、少し意識してしまう。

幼馴染と2人で線香花火なんて
よくあるシチュエーションだけど、
きゅんきゅんするし、案外。

優「あ、」

『やったー！私の勝ちー！』

優「最悪…… 」

岸の火が先に消えて、勝ったのは私。

優「で、何してほしいの？俺に」

岸の視線が花火から私に移って
戸惑った私の火もすぐに消えてしまった。

ぶはって笑う岸の笑顔に、
胸が苦しくなるのは何でだろう。

私を見つめる瞳を、
真っ直ぐ見れないのは何でだろう。

優「百瀬？」

『平野くん…… 』

平野くんの名前を出した途端に
歪んだ岸の表情。

でも、目の前に、君がいたから。

私は名前を呼ばずにはいられなかった。