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アイドルでもなく、芸能人でもなく、
友人でもクラスメイトでもない。
初めて岸をただの異性として意識した瞬間だった。
ありえない。だって岸は。
そんなの岸だって困るだけだ。
自分の中に生まれた気付いてはいけない想いに気付いてしまいそうで、
それを押し殺すのに必死になった。
「A」
呼ばれて岸と目を合わせると、
いつもよりも暗い色に見える瞳に吸い込まれてしまいそうで黙り込んだ。
「タオルとか持ってる？」
『‥‥‥持ってない』
「じゃあこれ」
背負っていたリュックを胸の方に持ってきて、
中から学校のジャージを取り出し私に差し出した。
『え、いいよ。岸だって濡れてるじゃん』
「違くて。そうじゃなくて。いいから着といて」
私からあからさまに目を逸らす岸を見て察した。
『あ、ごめん。気づかなかった。ありがとう』
「おー」
夏は汗もかくし、そもそも白いブラウスは透けやすいので毎日下着の上に1枚キャミを着ているけど、
男子にとってはそれも目のやり場に困るのだろう。
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作者名：あさひ | 作成日時：2021年1月7日 1時
