先生と私の日常(106) ページ9
大八木side
大八木「康……突然いなくなるからびっくりした。また、ここにいたの?」
声をかけても、康が振り返ることはない。
ただ、ずっとどこかを見つめたまま返事だけする。
龍田「…勇気を託してた。俺が出せなかったのを。―あの子たちなら大丈夫。俺みたいにはならないよ。二人とも優しいから」
大八木「そうだな。……木野下さん達も教室に戻ったよ。無理しなくていいって言ったんだけど、みんな残るって」
龍田「だろうね。強い子たちだ……力を合わせて乗り越えていくよ」
優しく吹く風に、日差しに思わず目を細めた。
(康……俺にはわからない。この問題が終息したら、康は――)
なのに、なんでそんなに穏やかな顔をしているんだ。
なんで素直に喜んでるんだ。
(確かに、子供の成長は喜ばしいよ……でも、)
大八木「康は…その後どうするんだ」
やっと振り返った康はやっぱり大人で、どこか余裕さえ感じた。
龍田「なぁ、俺のクラスはどうなると思う?どこへ行くんだろう?最悪からだんだんいい方向へ動いてる。…Aちゃんが、動かしてるんだ。少なくとも何人かはいい方へ大きく変われるだろうね。それは、Aちゃんのおかげで、それがAちゃんの力」
康は笑った。
ちょっと誇らしそうだ。
龍田「今はAちゃんを例に挙げたけど、クラスの子たちも一人ひとり特別な力がある。正しい方へ使えば、もっと良くなっていくと思うんだけど」
大八木「康……俺は―」
龍田「わかってる。俺のことを聞いてるんだって言うんだろ?」
その時、初めて康の顔が曇った。
それでも、口元は笑っていたけど…嬉しいのか辛いのか自分でもよくわからないって言いたげな顔だ。
龍田「なるようになるさ。あっちに任せる……でも、もうちょっと見たかったな。みんなの……先を」
大八木「…大丈夫だよ。きっと、大丈夫だ。康は……見れるよ。みんなの、A達の先を」
背を軽く叩き、友人を鼓舞する。
勘違いから始まって、いろんな人が傷ついた。
それが、もう終わろうとしているのに……
それぞれがいい方へと歩み始めたのに……
(最後まで、誰かが傷つかなきゃならないのか…?)
どうしてこんなことが始まった?
なぜ、こんなことに……
だが、はっきりとした理由が明らかになった時、今度は自分自身が苦しむことになるとは、この時まだ思っても見なかった。
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暁(プロフ) - 星月夜さん» コメントありがとうございます(o^―^o)ニコそうなんですよね。夢主ちゃんの人生は波乱万丈で少し可哀想な気もしてきます…(笑)更新は本当にバラバラですが、今後もこの作品のことをよろしくお願いいたしますペコリ(o_ _)o)) (2017年12月3日 17時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 面白い展開ですね。本当に一難去ってまた一難って、感じで読んでてハラハラしちゃいます(о^∇^о) (2017年12月3日 16時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - かたつむりんさん» ありがとうございます!何度も嬉しいコメントをありがとうございます。長くなってしまってますが、最後までお付き合いいただけたらと思います(o^―^o)ニコ (2017年10月25日 23時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
かたつむりん(プロフ) - 第参弾おめでとうございます!鈴木さんと和解できてよかった……。これからも頑張ってください! (2017年10月25日 16時) (レス) id: f35d15b5f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年10月24日 22時