奇跡から生まれた軌跡 ページ23
「A！A！！ああ、A…ううん、信じていたわ。あなたが目覚めてくれる日を…」
安堵の笑みを浮かべ、嬉しそうに言う母親。
でも、少女はどこか冴えない顔をしていいた。
誰もが微笑ましく見守っている中、母親は今までの想いを表さんとばかりに嬉しさを語る。
「本当に良かった。A……」
愛情に満ちた目で見つめ、手を伸ばす母親。
しかし、少女はそれを拒むように眉を顰めた。
その場にいた誰もが笑顔を失っていく。
「A…？」
『あの…さっきから、なんなんですか？Aって誰……あなたは一体…』
「じょ…だん、よね…？そうよね…きっと……驚かせ、ようと…して……」
少女は訝しげな顔をしたまま母親を睨んでいる。
後ろに待機していた看護師らが口元を抑え、涙を流す者さえいた。
(そん…な……)
少女に残った障害は2つ。
脊髄損傷による下半身麻痺。
そして――
頭を強く打ったことによる記憶障害。
誰も何も覚えてないようだ。
とうとう母親は正気を失い発狂し始めた。
泣き叫び「どうして？」を繰り返してる。
だが、少女の心に母の叫びが届くことはなかった。
それどころか、自分が誰かすらわからない混乱した状況の中、発狂し始めた母に嫌悪し…人を拒むようになった。
初めて出会った俺たちは、決していいと言えないスタートを切ったのだった。
――――――――
―――――
主治医の先生や他の先生方と相談し、自ら希望したこともあって俺は彩野さんに付きっ切りで心と体、両方のリハビリを行うこととなった。
人間不信に陥った彼女に心を開いてもらうのはなかなか時間がかかった。
「彩野さん。おはよう」
『………』
「おはよ、今日は快晴だね」
『………』
「おはよう」
『………』
1週間たっても会話ができることはなかった。
が、めげるものかと粘り続ける。
絶対に会話してやる…そうむきになっていたのかもしれない。
(にしても…困った)
食事もろくに取らない彼女。
困惑しているのだと思うが、いずれにしろこのままではまずい。
一刻も早くこの現状を打破しなければ。
そうして、粘ること10日目。
「おはよう。調子はどう…？」
『………』
(やっぱり今日も……)
『……おはよ、ございます』
「彩野さん…！」
ついに彼女は返事を返してくれたのだ。
それは、とても小さな声だったけど大きな一歩を踏み出したんだ。
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くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして！コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (
レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます！今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです！最初のお話は本当に感動しました！ (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くるみ＆暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月10日 12時
