契約の証 ページ11
窓に当たる強い風で硝子がカタカタと音を立てている。
もうすぐ日付が変わろうとしているのだが、絲はまだ帰ってこない。
もう、爽やかでほんのり甘い香りは消えてしまっていて、余計に物悲しい。
仕方なく電気を消して布団に潜り込み、夢の世界へと引き込まれそうになったとき、硝子の揺れる音が一層激しくなった。
｢絲？｣
何故か、そんな気がした。
彼が、戻ってきた気が。
名前を呟くと広がる爽やかでほんのり甘い香り。
私は布団から飛び出した。
｢絲っ！｣
｢……ここに居る。そんなに叫ぶな｣
声がしたかと思うと、光り輝く靄が集まり、窓辺に絲の姿が現れる。
｢絲っ……もう、来ないのかと思った。何故だかもう、あなたに会えないのかと……｣
｢普通はそれが、当たり前なんだがな。……でも、｣
｢でも？｣
絲はそっぽを向いて言った。
｢俺と、契約をしないか？｣
呟くように言った彼の横顔を月明かりがうっすらと照らし出す。
何時見ても、美しい顔だった。
｢契約……？｣
｢俺が、お前の式になると言ったところか。俺はお前に絶対従わねばならぬし、お前は俺の主となる。……どうだ？悪くは、無いのではないか？｣
｢式……でも、一体どうして？｣
｢悪くは無いと思っただけだ。お前と戯れるのも。それに、これだけ陰陽師の力が強い女、そうそうおらんからな。愉快ではないか｣
｢……それで絲と一緒に居られるの？｣
｢まあ、式であるからな｣
式。
何故絲がこんな話を持ち出したのかは分からない。
それでも、私の答えは決まっていた。
｢絲、私と契約してくれる？私の傍に、居てくれる？｣
｢ああ、面白そうだ。……では我が主よ、契約の儀を交わす｣
絲は私の手を取って、私の手と絲の手を互いの胸へと当てた。
｢A、汝を我が主と認め、我は汝の式となる。我は汝の生ある限り、汝に仕え、汝に従う事を此に誓おう｣
私たちを覆ったのは、まばゆい光と煌めく何かだった。
絲に触れられているところが、絲に触れているところが、温かく熱を持っていた。
目を覚ますと、そこは何時もと変わらぬ自分の部屋で。
まだ朦朧とした意識の中、絲の事だけははっきりと覚えていた。
｢絲｣
｢……どうした？我が主よ｣
靄に包まれて現れた絲。
夢ではなかったと、そう思った。そう、感じた。
ただただ、形容しがたい喜びがそこにあった。
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くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして！コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (
レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます！今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです！最初のお話は本当に感動しました！ (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くるみ＆暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月10日 12時
