次元を超えて(37) ページ38
その日の夜。
ジャーファルはいつもより少し遅く、采華のもとを訪ねた。
「夜分にすみません」
「よい。おぬしは本当に学が好きじゃの」
「ええ。学ぶのはいいことです。知識は無駄になりませんから」
「…そうじゃな。ここで学んだことも、あちらで役に立つやもしれぬしな」
今日はこの国の現状、そして華家の歴史上に記述してあった『数千年の呪い』について、教えてもらう。
華家の事はもちろん、この国の政治や人々が出す知恵も、学んでおけば役に立つ。
(シンドリアは資源の少ない国……この国の知恵をお借りすれば、きっとより良い方へ)
采華はここも、島国だと言っていた。
海に囲まれたという共通点があるので、きっとためになる知恵や方策があるはず。
二人で話して小一時間が過ぎた頃。
辺りはすっかり暗くなり、満天の星が空に浮かび上がっている。
「もう暗い。今日はこれまでじゃの」
「ええ、そうですね。ありがとうございました。……あの」
「なんじゃ?」
「大丈夫…ですか?顔色が……」
「目敏いな」
はじめは外の光のせいで青白く見えるのかと思っていたが、どうやら采華自身が青い顔をしているようだ。
あまりに普段通りなので、今まで全く気付かなかった。
「具合が悪いのに、申し訳ありません。あの…誰か呼びますから、もう休んでください」
「よい。誰も呼ぶな」
「でも…」
「呼ぶなと、言っておるのじゃ」
こういう時、采華は絶対に人が逆らえないような声で怒る。
ジャーファルは渋々、言うことを聞いた。
「悪いな。誰にも知られるわけにいかん。ただでさえ不安定な状態の屋敷なのに、当主が倒れたと噂が広まれば……」
「確かに、よくないでしょうね。わかりました。誰にも言いません。だから……休んでください」
「その前にそちに聞きたいことがある」
書類のかたずけをする手が止まる。
采華の顔は真剣そのもの。
いったい何を聞こうというのだ。
「ジャーファル。本当に帰りたいのか?」
「ええ、帰りたいです」
「誰かを犠牲にしても?」
「?そうですね……私は自分勝手なので」
どうしても、帰りたい。
そのために誰かを殺すことになっても……仕方ないと言うだろう。
「そうか。……のう、霧ノのことを話す。聞いてくれるか?」
「……体は」
「この程度で死んだりせんわ」
ジャーファルは采華に向き直った。
采華がわざわざ聞いてくれというのだ。
よほど大事な話なのだろう。
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岸田(プロフ) - 青李、李青秀なので呼び方は李青秀か青秀なのではないでしょうか…? (2019年2月2日 10時) (レス) id: a6cde36435 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - スノーさん» ありがとうございます、嬉しいです♪更新スピードバラバラですが、最後までお付き合いください(o*。_。)oペコッ (2017年11月14日 21時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 昨日見つけて一気見しちゃいました!続きを楽しみに待っています! (2017年11月14日 21時) (レス) id: 61560a1736 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - MIZOREさん» ありがとうございます(*- -)(*_ _) (2017年10月14日 15時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん» 私も一安心しました... 再ログインできて良かったですね! これからも更新楽しみにしてます! (2017年10月13日 22時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年9月30日 21時