検索窓
今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:25,233 hit

次元を超えて(37) ページ38

その日の夜。

ジャーファルはいつもより少し遅く、采華のもとを訪ねた。


「夜分にすみません」

「よい。おぬしは本当に学が好きじゃの」

「ええ。学ぶのはいいことです。知識は無駄になりませんから」

「…そうじゃな。ここで学んだことも、あちらで役に立つやもしれぬしな」


今日はこの国の現状、そして華家の歴史上に記述してあった『数千年の呪い』について、教えてもらう。

華家の事はもちろん、この国の政治や人々が出す知恵も、学んでおけば役に立つ。


(シンドリアは資源の少ない国……この国の知恵をお借りすれば、きっとより良い方へ)


采華はここも、島国だと言っていた。

海に囲まれたという共通点があるので、きっとためになる知恵や方策があるはず。


二人で話して小一時間が過ぎた頃。


辺りはすっかり暗くなり、満天の星が空に浮かび上がっている。


「もう暗い。今日はこれまでじゃの」

「ええ、そうですね。ありがとうございました。……あの」

「なんじゃ?」

「大丈夫…ですか?顔色が……」

「目敏いな」


はじめは外の光のせいで青白く見えるのかと思っていたが、どうやら采華自身が青い顔をしているようだ。

あまりに普段通りなので、今まで全く気付かなかった。


「具合が悪いのに、申し訳ありません。あの…誰か呼びますから、もう休んでください」

「よい。誰も呼ぶな」

「でも…」

「呼ぶなと、言っておるのじゃ」


こういう時、采華は絶対に人が逆らえないような声で怒る。

ジャーファルは渋々、言うことを聞いた。


「悪いな。誰にも知られるわけにいかん。ただでさえ不安定な状態の屋敷なのに、当主が倒れたと噂が広まれば……」

「確かに、よくないでしょうね。わかりました。誰にも言いません。だから……休んでください」

「その前にそちに聞きたいことがある」


書類のかたずけをする手が止まる。

采華の顔は真剣そのもの。


いったい何を聞こうというのだ。


「ジャーファル。本当に帰りたいのか?」

「ええ、帰りたいです」

「誰かを犠牲にしても?」

「?そうですね……私は自分勝手なので」


どうしても、帰りたい。

そのために誰かを殺すことになっても……仕方ないと言うだろう。


「そうか。……のう、霧ノのことを話す。聞いてくれるか?」

「……体は」

「この程度で死んだりせんわ」


ジャーファルは采華に向き直った。

采華がわざわざ聞いてくれというのだ。


よほど大事な話なのだろう。

次元を超えて(38)→←次元を超えて(36)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (18 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
35人がお気に入り
設定タグ:ジャーファル , マギ , トリップ   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

岸田(プロフ) - 青李、李青秀なので呼び方は李青秀か青秀なのではないでしょうか…? (2019年2月2日 10時) (レス) id: a6cde36435 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - スノーさん» ありがとうございます、嬉しいです♪更新スピードバラバラですが、最後までお付き合いください(o*。_。)oペコッ (2017年11月14日 21時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 昨日見つけて一気見しちゃいました!続きを楽しみに待っています! (2017年11月14日 21時) (レス) id: 61560a1736 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - MIZOREさん» ありがとうございます(*- -)(*_ _) (2017年10月14日 15時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん» 私も一安心しました... 再ログインできて良かったですね! これからも更新楽しみにしてます! (2017年10月13日 22時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年9月30日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。