次元を超えて(31) ページ32
「確かにそうですね…でも、私は雨が優しいから嫌いだ」
『優しい?』
ジャーファルはおもむろに手を伸ばし、2・3滴の雨水を手に取った。
「ここの雨も暖かいんですね」
『暖かい?冷たいように感じるが…』
Aもつられるように手を伸ばし、手に落ちた雫の温度を確かめた。
やはり冷たい。
暖かい雨なんて、夏ぐらいしか降らない。
だけど、ジャーファルは暖かいと言った。
「……雨が降るとね、泣いてもいいよって言われてるみたいで…甘やかさないでほしいって思うんです」
『は?』
「『泣いてもいいんだよ。大丈夫、恥ずかしい事じゃないよ。だってね……空も泣くんだから』友人は私によくそう言ってくれたものです」
もっとも、全く持って素直という言葉があてはまらなかったあの頃はその言葉も差し伸べられた手も払いのけてしまったのだが。
今は、それが妙に心に染みた。
全く知らない他界の地。
心細くなることだって何回もある。
そんな時、この言葉が…ウォルの声が聞こえてくる。
― ジャーファル。涙はお空が隠してくれるんだよ。雨に濡れたら、泣いてるかどうかなんて誰にも分らないよ ―
暖かな雨降るあの日にそう言った彼女は春のようで、月って名前なのに陽だまりみたいな奴だから変だと思っていた。
任務を遂行することで、心を殺し、弱い自分を消し去ろうと必死だったあの頃。
そんな時に、彼女が優しくするものだから心底やめてほしいと思ったものだ。
そして、それは今も変わらない。
優しい彼女の言葉が弱い心を癒すものだから……
『好きなのじゃな。その女子のことが』
「は?」
今度はこちらが間抜けな声を出してしまった。
(私が…ウォルを?いやいや、ない。ありえない。だって、彼女は仲間ですよ……)
『今でも好いておるから、そのような顔をしてその者のことを話すのであろう?』
「そのようなって……どんな顔ですか?」
『嬉しそうで幸せで……どこか辛そうな顔じゃ』
「辛そうって……」
『好きで仕方がないのに、もう手が届かなくて辛い。そちの気持ち、わからんでもない』
踵を返し、部屋の奥へと移動するA。
『冷えてきたので戻る。そちも体を壊さぬように……』
(わらわの恋が今だ手が届かぬと思うのは、きっと……)
心が手に入らないから。
千夜の心がAに向くとこはない。たぶん、永遠に。
(真じゃ。雨とは…優しいの)
雨音が柔らかい。まるで慰めているかの様に。
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トリップしたら、避けることはできないので最初から関わって行くスタイル。
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岸田(プロフ) - 青李、李青秀なので呼び方は李青秀か青秀なのではないでしょうか…? (2019年2月2日 10時) (レス) id: a6cde36435 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - スノーさん» ありがとうございます、嬉しいです♪更新スピードバラバラですが、最後までお付き合いください(o*。_。)oペコッ (2017年11月14日 21時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 昨日見つけて一気見しちゃいました!続きを楽しみに待っています! (2017年11月14日 21時) (レス) id: 61560a1736 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - MIZOREさん» ありがとうございます(*- -)(*_ _) (2017年10月14日 15時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん» 私も一安心しました... 再ログインできて良かったですね! これからも更新楽しみにしてます! (2017年10月13日 22時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年9月30日 21時