次元を超えて(21) ページ22
『おぬッ…な、にを……』
「こうすれば、誰にも見られないでしょう？私にも見えない……だから、思いっきり泣いていいんですよ」
『は…』
「もう我慢しなくていいんです。気が済むまで泣けばいい。秘密にしておきますから」
何を言っているのだこの男…と思ったが、堰を切ったように涙が流れる。
誰かに甘えたかった。でも、自分が泣くわけにはいかないと堪えてきた。
なのに…この男は泣けばいいという。
皮肉なことに大嫌いな男に一番欲しかった言葉をかけてもらえたのだ。
それでも、霧ノや千夜、母…事情を知っている者の前ではこんな風に泣けない。
泣いているのが申し訳なくなるから。
でも、ジャーファルは違う。
だからこそ、この男に言われたことがAの心を救う。
『おぬし…な、ど……嫌いじゃ』
「はいはい」
『なぜ…今、よりによって……今優しくするのじゃ』
攻めるように言いながらも、声は弱々しい。
秘密にすると言ってくれた。
なら、今だけ…ほんの少しだけ、甘えて泣いてもいいだろうか？
心を読んだのか、読んでないのか…ジャーファルは肯定するように背を撫でてくれる。
Aは声をあげて泣いた。
我慢していたぶん、たくさんたくさん泣いた。
声をあげて泣くなんて…何年ぶりだろう？
霧ノにも泣いているところは見せはしても…絶対にこんな風に泣くところは見せないのに。
だが、肩に顔をうずめ、絶対に顔だけは見せないようにする。
(意地っ張りだな…にしても……)
あまり泣きそうにないAが声をあげて泣く程、心を苦しめることって一体…？
星が輝く夜空。いつもより静かな空はAを慰めているようだ。
しばらくして、Aは泣き止みジャーファルの腕から離れる。
泉の前にちょこんと座り、鼻声でジャーファルに言った。
『内緒…じゃぞ。このこと他言無用じゃ』
「はいはい、わかってますよ…落ち着きました？」
『うむ。その……ありがとう』
「え…？！」
『そちのおかげで…大分楽になった。感謝する』
他の誰にも見せられなかった。ジャーファルじゃないと甘えられなかった。
本当はジャーファルにだってこんな姿見せたくなかったが、思いっきり泣けば心は軽くなり少しスッキリとした。
泣けて良かったと思えた。
「どういたしまして」
初めて見たジャーファルの優し気な笑顔に、Aも思わずほころぶ。
こうして、二人は物語の第一歩を踏み出したのだ。
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岸田(プロフ) - 青李、李青秀なので呼び方は李青秀か青秀なのではないでしょうか…？ (2019年2月2日 10時) (
レス) id: a6cde36435 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - スノーさん» ありがとうございます、嬉しいです♪更新スピードバラバラですが、最後までお付き合いください(o*。_。)oペコッ (2017年11月14日 21時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 昨日見つけて一気見しちゃいました！続きを楽しみに待っています！ (2017年11月14日 21時) (レス) id: 61560a1736 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - MIZOREさん» ありがとうございます(*- -)(*_ _) (2017年10月14日 15時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん» 私も一安心しました... 再ログインできて良かったですね！ これからも更新楽しみにしてます！ (2017年10月13日 22時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月30日 21時
