次元を超えて(19) ページ20
『本当になんでもないんです……』
頼りない声でそう言い張るA。
千夜はそれ以上追求することをやめ、代わりに自分の事を話す。
「…姫の耳にももう届いているかと思いますが、弟は死にました」
その言葉にAが微かに肩を震わせたことに千夜は気づかず、話を続ける。
「遊人で、いつもどこかをふらふらしているような奴でしたが…あれでも、弟です。死ぬとやはり悲しい。……人の恨みを買うことも多々あったので、きっと弟を恨んでいた輩が。それにしても、酷いものでした。あそこまでせずとも、よかったでしょうに」
地を見つめ、独り言のように千夜は言う。
Aはどう言葉を返せばいいかわからず、黙ったままだった。
(わらわが……殺してしもうたと言えば千夜様はわらわを恨むであろうか……)
心優しい、弟想いの兄。
そんな人の心を傷つけてしまったことが苦しい。申し訳なさで胸がいっぱいになる。
「姫…もしや、弟のことで悩んでおられるのですか？」
Aは黙ったまま。肯定も否定もしない。
千夜はそれを是ととらえた。
「ならば、どうか気に病まないで。姫のせいではありません。あやつの死に姫は何のかかわりもない。……姫が弟を思い、心を痛めておられるのなら弟も幸せでしょう」
望んだ言葉をかけられて、心を見透かされているみたいだ。
千夜にも噂は耳に入っていたようだ。
「皆が何と言おうと、あなたは悪くない。…死体を見ても、明らか人の仕業です。それに呪いなどこの世に存在しませんよ」
そう言ってくれることが嬉しい。
でも、呪いが存在したとすれば…噂が事実だとすれば、千夜はAを恨むことだろう。
何度違うと言われても…この思いは消えない。
自分が殺したかもしれないという思いは…消えることなくAを苦しめ続ける。
Aは本当は誰かに甘えて泣きたかった。
だが、自分が殺したかもしれないという手前、涙を流すことなど許されない。
泣いても千琳は戻らない。
ならば泣くだけ千琳に失礼だ。
霧ノにも母にも…もちろん千夜にも涙を見せられない。
心配をさせるだけ。悲しませるだけ。
無理にでも明るく振る舞い続けるしかないのだ。
『千夜様…千琳様の事、お悔やみ申し上げます。ですが…わらわも呪いなど信じてはおりませぬ。本当に気分がすぐれぬだけなのです』
「姫…」
『山を見て回りましょう。戌の刻までまだ時間がありますゆえ』
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岸田(プロフ) - 青李、李青秀なので呼び方は李青秀か青秀なのではないでしょうか…？ (2019年2月2日 10時) (
レス) id: a6cde36435 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - スノーさん» ありがとうございます、嬉しいです♪更新スピードバラバラですが、最後までお付き合いください(o*。_。)oペコッ (2017年11月14日 21時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 昨日見つけて一気見しちゃいました！続きを楽しみに待っています！ (2017年11月14日 21時) (レス) id: 61560a1736 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - MIZOREさん» ありがとうございます(*- -)(*_ _) (2017年10月14日 15時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん» 私も一安心しました... 再ログインできて良かったですね！ これからも更新楽しみにしてます！ (2017年10月13日 22時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月30日 21時
