君に送る復讐劇［ジル］ ページ7
ぽつんと置かれた十字架の墓石。
地下には、俺が愛した一人の女が眠っている。
「ジル様は本当、優秀でいらっしゃいます」
それが彼女の口癖だった。
数学にしても歴史にしてもフランス語にしても。
そうしてにっこりと笑って俺を褒めた後、必ず冷めた口調で皮肉っぽく続けるのだ。
…ベルフェゴール様とは違って、と。
Aはオルゲルトの義理の妹として連れてこられた、俺専属のメイドだ。
整った顔立ち、繊細なたたずまい、美しい言葉使い…彼女はメイドとして完璧な女だった。
…仕える者を自ら選ぶという欠点を抜かせば。
独占欲が強いのか、メイドとしての誇りなのか、Aは一度仕えると決めた者をとことん慕った。
しかし、それ以外の者には冷徹極まりない笑顔を向け、影であからさまな毒舌を溢す。
ベルフェゴールや王妃は彼女に嫌われた、
でも俺や王は彼女のお気に召したようだった。
当然だろ、俺こそ本物の王子なんだから。
Aは、俺の愛する物を愛し、俺の嫌う物を嫌った。
果たしてそれが本心なのか偽りなのか分からないが、俺はそんなAを愛した。
そして、弟を嫌い続けた。
彼女と俺の運命が分かれたのは、あの日。
ベルフェゴールの殺ったマフィアの残党が、
城に入って来た夜＿＿＿。
廊下が血まみれになるのを呆然と見つめていたオリゲルドと俺は、Aに手をひかれ、窓を蹴破って逃げ出した。
銃声をBGMに、俺達は走り続けた。
やがてAはぴたりと動きを止め、頬に伝う涙をぬぐいもせず、俺の肩をがっしりと掴んだ。
そのあまりの形相と、震える手から伝わる冷たさに驚いた事を覚えている。
『ジル様、兄と共にお逃げ下さい。…あの城はもう危険です』
『…は、お前はどうすんだ』
震える声から感じた覚悟に頬をひきつらせて問えば、あいつは静かに首を振った。
『…私は、王を最後までお守りします』
『…どうせ死んじまってるに決まって…っ!!』
『ジル様!!!』
怒りをこめた俺の言葉は、彼女の力強い言葉で遮られた。
瞬間＿＿＿＿、一発の銃声と共に、彼女は膝から崩れ落ちた。
『…A？打たれ……っ!!』
『ジル様、私はっ…、貴方を永遠にお慕い申しあげます……っ。だから、偽者のあの男を……!!』
"殺してしまいなさい＿＿＿!!"
弟への嫌悪が、殺意に変わった。
＊君は俺を慕い、俺は君を愛した。
なら、俺は君の遺言を生涯かけて叶えよう。
＿＿＿＿＿
ありす様リクです。…これ、切甘？
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ものもの - ずっと前に偶然読んでそれが夢霧さんだったとは…。この短編集探していました。「青春短し恋せよ乙女」が当たり前かと思って使っていたのですが、「命短し恋せよ乙女」のもじりだったんですね！長編のほうも読んでいます。尊敬しています！！！ (2014年3月31日 8時) (
レス) id: 2ce098c691 (このIDを非表示/違反報告)
夢霧 - 命さん» 読んでいただき嬉しい限りです。…実は、リクエストをいただいてもご希望通りのような作品を完成させる自信がなく、リクエストは基本お断りしております。詳しい事は"リクエストお断りのお知らせ"よりご覧下さい。本当に申し訳ありません。 (2013年12月12日 23時) (レス) id: 74af34c10f (このIDを非表示/違反報告)
命 - 風とコロネロとマーモンとフランと雲雀恭弥で別々でヤンデレ。５つもリクエストしてしまうことになりますがよろしくお願いします。 (2013年12月9日 3時) (レス) id: f5d1fbf7c1 (このIDを非表示/違反報告)
夢霧(プロフ) - 燐花さん» お褒めに預かり光栄です(*^^*)新しく暗めの短編を更新しました。よかったらご覧ください！ (2013年11月30日 19時) (レス) id: 74af34c10f (このIDを非表示/違反報告)
燐花(プロフ) - 夢霧さん» やっぱりそうでしたか！私の周りの方、あまりご存知なくて・・・なんか感激です！ 夢霧さんの作品とっても面白いです！！ 応援してます！！ (2013年11月26日 6時) (レス) id: f45056ee11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢霧 | 作成日時：2013年8月11日 16時
