王子の午後の過ごし方［ベル］ ページ5
どさっ、という音と共に背中に痛みを感じた。
瞬間、視界は転がり、してやったり顔で笑うベルフェゴール様と天井が広がる。
押し倒された事を理解した途端、爪先の真上にあったベルフェゴール様の腹を蹴った。
「…おま、何、すんの。
女ならちょっと顔赤くするもんじゃん」
「心外ですわベルフェゴール様。
私が冷静なのは、相手があなた様だからでございます。
さ、笑えない冗談はとっとと止めて下さい」
淡々と言い放ち、もう一度思いっきり蹴り上げれば、ベルフェゴール様は体を起こした。
「……なぁ、A。俺と付き合えよ」
「私はとっくに付き合わされております。
ベルフェゴール様の波瀾万丈な人生に」
正直な本音を言えば、ベルフェゴール様はさらに不満げになる。
間違ってはいないでしょう、と呟けば、
今度は私が蹴りを入れられた。横暴王子め。
『ベルフェゴール、これがお前の専属メイドだ。
お前と年も近い。遊び相手位にはなるだろう』
そう言った王が、まだ幼い私を幼いベルフェゴール様に差し出したのは、十年ほど前の事。
はじめまして、涼川Aと申します。
何なりとお申し付けを、ベルフェゴール様。
服の裾を持ち上げ、メイドお決まりの挨拶をした私に、彼は、
「…Aってナイフ投げできるのかよ？」
労いとも反抗とも取れぬ、挑戦のような言葉を投げ掛けた。
今もその言葉は、ししっ、という奇妙な笑い声と共に耳奥に焼き付いている。
やがて私達は、いつでも二人でいるようになり、様々なイタズラを繰り返した。
一番面白かったのは、ラジエル抹殺。
ズタズタに引き裂かれたラジエルを前に、私達二人を抱き締めて泣く王妃の腕の中で、互いに笑い声を殺したあの日。
もうあんなやんちゃはしないが、あの懐かしくも賑やかな日々を時折思い出す。
仕事をやり終えれば、再びベルフェゴール様が一人言のように呟いた。
「…ああいう時、すげえ楽しかったんだぜ？」
まるで、私と彼の思考がシンクロしている気がして、部屋から出ようとした足を止めた。
「お前とイタズラしてさ、笑ってさ…。
すげえ楽しかった。
お前じゃないと、ダメだった」
ぽつぽつと語られる言葉に、息を止めた。
「俺、お前の事、好きだ」
どくんと高鳴った心臓に、目を見開いて。
熱が籠って赤くなった顔を見られる前に、部屋から駆け出した。
＊王子の午後の過ごし方
それは、君に想いを伝える時間
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ものもの - ずっと前に偶然読んでそれが夢霧さんだったとは…。この短編集探していました。「青春短し恋せよ乙女」が当たり前かと思って使っていたのですが、「命短し恋せよ乙女」のもじりだったんですね！長編のほうも読んでいます。尊敬しています！！！ (2014年3月31日 8時) (
レス) id: 2ce098c691 (このIDを非表示/違反報告)
夢霧 - 命さん» 読んでいただき嬉しい限りです。…実は、リクエストをいただいてもご希望通りのような作品を完成させる自信がなく、リクエストは基本お断りしております。詳しい事は"リクエストお断りのお知らせ"よりご覧下さい。本当に申し訳ありません。 (2013年12月12日 23時) (レス) id: 74af34c10f (このIDを非表示/違反報告)
命 - 風とコロネロとマーモンとフランと雲雀恭弥で別々でヤンデレ。５つもリクエストしてしまうことになりますがよろしくお願いします。 (2013年12月9日 3時) (レス) id: f5d1fbf7c1 (このIDを非表示/違反報告)
夢霧(プロフ) - 燐花さん» お褒めに預かり光栄です(*^^*)新しく暗めの短編を更新しました。よかったらご覧ください！ (2013年11月30日 19時) (レス) id: 74af34c10f (このIDを非表示/違反報告)
燐花(プロフ) - 夢霧さん» やっぱりそうでしたか！私の周りの方、あまりご存知なくて・・・なんか感激です！ 夢霧さんの作品とっても面白いです！！ 応援してます！！ (2013年11月26日 6時) (レス) id: f45056ee11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢霧 | 作成日時：2013年8月11日 16時
