キス・ミー・クイック！[獄寺隼人] ページ16
「ねぇ、君ん家で飲んでいいでしょ？」
有無を問わせぬ口調と、少しだけ腫れぼったい目、片手に掲げたビニール袋。
「……俺は明日仕事が」
「…あたしの誘う酒が飲めないってわけぇ？」
挑発的になる語尾に完敗し、ドアのチェーンを外してAを中に入れる。
遠慮せずにリビングへ向かう背中を眺め、長期戦になりそうだとため息を吐いた。
＊キス・ミー・クイック！
俺が彼女と出会ったのは、行きつけのカクテルバーだった。
十代目に任務が入り、夜酒の約束を取り消されたまま一人でリキュールを楽しんでいた時。
「あんたもすっぽかされたクチ？私より若そうなのに、大変ね」
背後から話しけてきたそいつが、涼川Aだった。
話を聞けば、人生36人目の男と夜デートを期待していたのにすっぽかされたらしく。
シャマルと同等のたらしじゃねぇかと呆れていた俺が喋らないのをいいことに、涼川はベラベラ男共への不満を垂れ流した。
やがて二時間後、25人目の公務員の奇妙な性癖に話が変わった瞬間、涼川は力尽きた。
グラスにウォッカを残し、微かな寝息を立てる女を放置する事もできず。
あの時、自分と彼女の分の金を払い、Aを抱えあげた時のバーテンダーの顔は忘れられない。
その晩から、俺と彼女の奇妙な関係が始まったのだ。
彼女はカクテルを片手に話し込み、俺は黙ってその愚痴を聞く。
恋人でもなく友人でもなかったが、Aは弱味をさらけ出すかのように喋りまくる。
一度何故かと聞いた事があるが、弟みたいで話しやすいと断言された。
実際、彼女とは五つも年が離れている。
……話を戻そう。
ともかく、俺も話の流暢さと面白さにつられ、俺もその奇妙な関係を享受していた。
両親の介護、昔の男、性格の悪い上司、会社の受付の可愛い後輩。
テーマはこれまでも大量にあった。
しかし＿＿＿＿
(ここまで泣き面さらして来たのは初めてじゃねーか……)
リビングでAを待たせ、彼女の買ってきた材料を元にカクテルを作る。
俺はそんなに詳しくないから名前はわからないが、奴が勧めるものは美味であると知っていた。
二人分のグラスを盆に乗せ、リビングへ向かう。
ぐったりと疲れた様子でソファーに座るAを見て、めんどくせぇと呟けば、ぎりっと鋭く睨まれた。
終わり
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ものもの - ずっと前に偶然読んでそれが夢霧さんだったとは…。この短編集探していました。「青春短し恋せよ乙女」が当たり前かと思って使っていたのですが、「命短し恋せよ乙女」のもじりだったんですね！長編のほうも読んでいます。尊敬しています！！！ (2014年3月31日 8時) (
レス) id: 2ce098c691 (このIDを非表示/違反報告)
夢霧 - 命さん» 読んでいただき嬉しい限りです。…実は、リクエストをいただいてもご希望通りのような作品を完成させる自信がなく、リクエストは基本お断りしております。詳しい事は"リクエストお断りのお知らせ"よりご覧下さい。本当に申し訳ありません。 (2013年12月12日 23時) (レス) id: 74af34c10f (このIDを非表示/違反報告)
命 - 風とコロネロとマーモンとフランと雲雀恭弥で別々でヤンデレ。５つもリクエストしてしまうことになりますがよろしくお願いします。 (2013年12月9日 3時) (レス) id: f5d1fbf7c1 (このIDを非表示/違反報告)
夢霧(プロフ) - 燐花さん» お褒めに預かり光栄です(*^^*)新しく暗めの短編を更新しました。よかったらご覧ください！ (2013年11月30日 19時) (レス) id: 74af34c10f (このIDを非表示/違反報告)
燐花(プロフ) - 夢霧さん» やっぱりそうでしたか！私の周りの方、あまりご存知なくて・・・なんか感激です！ 夢霧さんの作品とっても面白いです！！ 応援してます！！ (2013年11月26日 6時) (レス) id: f45056ee11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢霧 | 作成日時：2013年8月11日 16時
