2 ページ31
・
翔太は着替えを済ませるとササッと帰ってしまい、数人だけが残っていた中に舘さんもいた。
背もたれにダラっと持たれてること自体珍しいんだよね。
「調子悪いんじゃない？」
声をかけたら潤んだ瞳が私を見上げた。
ああビンゴだ。
この時に熱があるんだと確信して、タクシーに乗って舘さんの一人暮らしの部屋に連れ帰った。
何かを食べて薬を飲ませなきゃ、でも何かあるかなって冷蔵庫を開けさせてもらったら、まだこの時は引っ越して間がないことと今よりも料理をしてる印象がそんなになかったから、ガラリとした中を見てさてどうしようかって。
冷凍庫をあけたら冷凍されたご飯があった。
卵やら、調味料もちゃんとある。
ならばと作ったのが”卵雑炊”で、何故今は元気なのにこれなんだろうって。
「あの時ね実家を出たばかりでなんでか頼りたくなくて、一人で強がってたんだけどさ。でもやっぱり人の優しさって有難いなぁって感じたんだよね。
……今も忘れられないよ、あの時の雑炊の味は」
「……大袈裟だよ。舘さんが作っても同じ」
ふわ、と身体が背中から包まれて、背後にいる舘さんをチラリと見上げる。
「同じじゃない。同じじゃないんだよ。あのね、俺がもしまた熱を出したら、その時はAに作ってほしいの」
ギュッと、お腹に回った腕に力が込められていく。
「……このままAと一緒に住んで、ずっと俺の帰りを待っててほしい」
「………」
「こんなふうに欲を出すつもりはなかった。Aが幸せで、笑っててくれるならそれでいいやって。
俺じゃない誰かとでも幸せになってくれたらって、」
カチッと火を止められて、くるりと向かい合う。
顎を指で掬われて、熱の篭った視線が降ってくる。
「でもそれは逃げだよね。勇気がなかっただけだ。A、俺だけのプリンセスになってくれない？」
ゆっくりと舘さんの顔が近づいてくる。
以前ならなにも思うことなく、それをすんなり受け入れていたけど、グッと唇を噛んで私は顔を背けた。
「……それが、答えかな？」
「っ、ごめんなさい」
「俺じゃいや？」
ふるふると顔を振った。
違う、そうじゃないの………
「ふふ、雑炊……一緒に食べよかっか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3676人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みぃ(プロフ) - TwitterのDMを送らせていただいためぐみと申します。最近SnowManを知って、一気に読み進めてきました。切なくて涙がとまりません(>_<)続きも楽しみに読ませていただきます。 (2022年12月25日 19時) (
レス) @page47 id: 6ed58a0011 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» コメント、リクエストありがとうございました！遅くなってしまってすみません。ほんとはもっと賑やかものがいいかなって思ったんですが終盤なので、作品と絡めたら暗い感じになってしまって(汗)ちょっとでも楽しんでもらえていたら嬉しいです！ (2021年9月4日 18時) (レス) id: bf817d2202 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - ゆきんこ様、こんばんは☆ﾘｸｴｽﾄ、ありがとうございました♪ﾒﾝﾊﾞｰさんの反応はどんな感じなのかなって、完全な思いつきだったので、こんなｽﾃｷなお話にしていただき、感謝しかありませんv(￣ー￣)v ありがたや〜☆ (2021年9月3日 18時) (レス) id: 4aac9fb6a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2021年8月17日 13時
