【忍たま】利吉さんはいじわるだ。【山田利吉】 (ページ37)

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利吉side

迂闊だった。

突然、金縛りにでもあった様に
動かなくなってしまったA。

視線の先を見る。
路地裏に2人の男。

あぁ、そういう事だ。
Aは思い出してしまったのだ。

北石から聞いた時。

本当は、はらわたが煮え繰り返る思いだった。
未遂だった等関係ない。

触るな。汚い手で、Aに触るな。

そんな感情が、私を支配していたのだ。

利吉「A？」

無反応。
今さっきまで楽しそうにしていた笑顔は
そこにはなく。

利吉「顔色が悪い、ちょっと休もう」

Aを、その場から遠ざけた。

近くの茶屋まで来て座らせる。

『… すみません』

利吉「ん？」

『せっかく、
　連れてきてもらったのに』

小さい声で呟いたかと思えば、それは謝罪だった。
そんな事、いいから。

利吉「そんな事いいんだ、ごめん」

思い出させてしまった、そう言えば

『え、し、知ってたんですか？』

Aは驚いた顔で私を見た。

利吉「先日、北石に聞いたんだ。
　 Aが大変な目に合ったって」

『そうですか…』

少し落ち着いただろうか。
Aはお茶を口にして、溜息を吐いた。

『もう大丈夫です、行きましょう』

利吉「本当に？」

無理しないで。
その小さな手が、まだ微かに震えているから。

『利吉さんがいてくれるから』

微笑を浮かべて。
自分を求めてくれるAに。

少し速度を上げた鼓動がばれないように
Aの手を包み込み。

利吉「私がいるから、大丈夫だよ」

私はいつもの調子を装うのだ。