【忍たま】私は久々知くんが。【久々知兵助】

なまえを呼ぶこと ページ20

久々知side



良い天気だなぁ……
空を見上げて、門の前に立っている。




『久々知くん』




小門が開いたと思ったら
あの、えっと……
Aが、ひょこっと顔を出した。


まだ名まえを呼ぶのは照れる。



今日は忍術学園は休日。
恋仲になって初めての、逢引きの日。




『ごめんね、遅くなっちゃって』



兵助「ううん。俺も今来たところ」




急いで走ってきたのだろう。
Aの乱れた前髪を整えると、耳のすぐ上辺りに、
きらきらと光る髪飾りが見えた。




兵助「可愛いね、これ」



『あ、ありがとう。髪飾りどれにしようか
　悩んじゃって……遅くなったの』




ごめんねと、しゅんとするAの頬は
ほわっと染まって。


どれにしようかって、自分と出掛けるために
悩んでくれたんだって……そんなの、




可愛いでしかない……！！




兵助「そんなの気にしないで。可愛いよ。
　 ほら、出掛けよう？」




手を差し出すと、
Aは嬉しそうにその手を握る。


あぁ、

温かくて柔らかくて、小さな手。



忍として鍛錬に励むAも好きだし、
髪飾りひとつに悩む女の子らしいAも、好きだ。




『久々知くん、今日はどこに行く？』




忍術学園から歩いて少し経った頃、
Aが俺を見上げて言う。




兵助「そうだなぁ……まずは、うん」



『うん？』




さらっと言えたら良いんだけれど、





兵助「………まえ」



『まえ？』




ぽそぽそと、目も合わせることができずに
独り言のように呟く。




兵助「……名まえ」



『あ……』



こんなときくらいは、
ただの恋仲の男女でいたいから。




『……へ、兵助』




恥ずかしそうなAが愛しくて。




兵助「……嬉しい、A」


『A……私も、嬉しい』




お互いの名まえを呼ぶことが、
こんなにも嬉しくて……愛しいだなんて。




兵助「何か食べる？」



『んー……あ、あのお店のお豆腐！田楽味噌の』



兵助「あ、いいね」




ふたりで手を繋いで寄り添って、
一緒に豆腐料理を食べて。




兵助「あ、味噌が付いてる」



『本当？』




口元に付いた味噌を指で拭ってぺろりと舐めると、
Aは顔を真っ赤にさせて。



なんて幸せで愛しい時間なんだろう。




そういえばさっきから
念のため意識しているけれど、
今日は勘右衛門の尾行はないみたいだ。

温かくて優しくて→←俺が守るよ

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