【忍たま】彼女を見つけた話。２【土井半助】 (ページ10)

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土井side

『どうして……嬉しかったんですか？』

Aさんは、不思議でならないといった様子で、
純粋な目で私を見つめて聞き返す。

土井「私は思い切り泣くAさんを見て、
　やっと感情を表に出せたんだなって」

あのときも言ったけれど、

土井「泣いても怒ってもいいですから……
　抱えずに何でも言ってほしいんです」

『土井、先生……』

Aさんが
楽しいこと、嬉しいこと、辛いこと、怖いこと、
何でも教えてほしい。

土井「私はAさんに笑ってほしいって、
　そう思っているから……利吉くんもね」

『笑って……』

Aさんはそう呟くように言って、
きゅっと握っていた手を緩める。

そして私は、次の瞬間に目を奪われた。

『ありがとう……土井先生』

Aさんの表情が和らぎ、ふわりと微笑んだから。

土井「っ……」

その少し表情の緩んだ、綺麗な笑顔に言葉が出ない。
ただ、体温がぶわっと上がる感覚。

あぁ、やっぱり

Aさんがいてくれることで、
私の心が満たされていく。

土井「う、うん」

その返事で精一杯で

どうやって自分の部屋に戻ったのか覚えてない。

◆◇

ある日の午後、一年は組では
Aさんが変装の授業を行っている。

『皆、準備ができたら呼んでね』

Aさんの教えをもとに化粧をしたり、
女性ものの小袖に身を包んだりして
生徒たち自身に変装させる。

廊下で準備を待つ私とAさん。

土井「上手くできるかなぁ」

『楽しみです』

そんな話をしていると、教室から生徒たちの呼ぶ声。

Aさんがガラリと板戸を開けると、

「「できましたぁ！」」

なんて、元気の良い生徒たちの化粧が
ケバくって酷くって……

土井「お、お前たち！」

なんだその顔は！と言いかけると

『ふふっ、』

私の前にいたAさんが振り返って、
綺麗に愛らしく、そして楽しそうに笑った。

あぁ

また、体温がぶわっと上がっていく。