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you side



一緒に出掛けてくれた伊作と乱太郎に挨拶もしないまま、私は部屋に逃げ込んでしまった。


部屋の隅で縮こまって、
止まってくれない涙をごしごしと袖で拭く。





ーまだAさんは不安定なんだ。
安易に行っちゃ駄目でしょう……!ー





私のことをよく理解してくれているからこその、
土井先生の言葉だけれど。





『……やっぱり私は、駄目なの』




ぎゅっと膝に顔を埋めると、
じんわりと涙が小袖を濡らした。






土井「違うよ」





ふいに、正面から抱きしめられる。



知ってる匂い。出張でいない間に、
すっかり恋しくなっていた匂い。




土井「もう泣かないで」




そう言って私を抱きしめるのは、土井先生。




『……怒った。私が外に出たから』



土井「うん、」



『でも私……っ』




ばっと顔を上げると、
土井先生は抱きしめた腕を緩めた。

そして懐から取り出した手ぬぐいで、
涙で濡れた私の頬を拭く。




土井「私のために、ですよね?
  Aさんの気持ちを知らないまま、
  怒ってごめんなさい」




土井先生はそう言って、
私が落とした包み紙を見せた。




土井「開けてもいいですか?」



『……うん』




私の頭をひと撫でして、
土井先生は包みを丁寧に開けた。


中には、手ぬぐいが一枚。
端にさりげなく模様をあしらったものだ。




土井「これを、私のために?」




私は小さく頷く。




『私は、土井先生に
優しくしたり守ったりできないし

土井先生の手ぬぐいは、私の涙を拭いてばかりだし

 なにかお礼がしたいと思っ……』




言い終わる前に、また抱きしめられた。




土井「……ありがとうございます、Aさん」



『……もう、怒ってない?』



土井「うん……いつでも自分が傍にいて
  守りたいって、そう思っていたから……」




そんな風に思っていてくれたの。
それがどういう意味なのか、
はたまた好きなのかわからないけれど。




土井「どうしてAさんが部屋にいなくて
  泣いて帰ってくるんだ……って
  腹が立ってしまって」



 
その切ない表情に、
たしかにドキドキと胸が高鳴るのを感じる。



今までにない、熱く溶けるような気持ち。




あぁ、これは……

 
私は、土井先生が好きなのだ。

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設定タグ:忍たま , 土井先生 , 土井半助   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:はな | 作成日時:2021年6月1日 23時

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