【忍たま】私に、確かに刻んで【善法寺伊作】

順調ですか？ ページ17

you side



青年「Aさん」



私のことを好きだと言ったあの青年は、
変わらずお店に通ってくれている。



『はい？』



青年「彼とは順調ですか？」



『……なっ、なんですか突然』




そんなことを聞かれるなんてなかったのに。
私は思わず声が上擦ってしまった。




青年「あはは。Aさんと恋仲なんて、
　 羨ましいじゃないですか」




相変わらず、爽やかな水色のような雰囲気を纏って
彼は笑う。




『いや、そんな……。
　彼は実家を離れて暮らしているので、
　なかなか会えないんです』



青年「そうですか……私ならいつでも大歓迎ですよ」



『じょ、冗談ばっかり！』




私の顔は、真っ赤だと思う。




◆◇

『ありがとうございました！お気をつけて』




お店も落ち着き、私もそろそろ上がる時間。



やっぱり伊作くんからの手紙は減った。


それはそうと、そろそろ長期休暇のはずなんだけど。かれこれ半年くらい経ってるし。



いつも休暇の日程は手紙で教えてくれる伊作くんだけど、今回はその知らせもなく……。






『お先に失礼します』



奥さんに見送られ、私は帰り道をひとりで歩く。


今日も忙しかったなぁ
こんなときに伊作くんに会えたら……




「Aちゃーん！」




私きっと、抱きついちゃうだろうな……




「Aちゃーん、僕だよ！」



『……えぇ！いっ、伊作くん？！』




薄暗い中で目を凝らすと、向こうから走って来たのは、まさか伊作くんだった。




伊作「はぁ……Aちゃん、
　 全然気付かないんだもんなぁ」




ふんわりした桃色のような伊作くんの雰囲気。




『伊作くんっ……！』



伊作「わっ…」




堪らず、ぎゅっと抱きつく。
伊作くんの胸に、顔を埋めた。




『おかえり！』



伊作「ごめんね、帰る連絡をするの忘れて……って、
　 僕も休暇の日程をすっかり忘れてたんだけど」




申し訳なさそうにそう言って、
伊作くんは私の背中に腕を回した。




『……いいよ、大丈夫。会えたから、良い』



伊作「うん……ただいま、Aちゃん」






伊作くんの胸の音に、ひどく安心した。

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