伊瀬谷ちゃんといっしょ！ (ページ11)

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ONE DAY LIVE2 ページ11

「_おそ松さんONSTAGEAより、F6の曲でしたー！
次はちょこっとだけおどっちゃう」

「それじゃあ次の曲！一回目のトークタイムもまだだから、へばらないでね！」

目の前に、居る。

ソレは確かに目の前に実在していて、目の前で歌って踊っていて、目の前で喋っていた。

ほとんど本能に任せるがままに、曲に合わせてブレードを振る。
何が何だかよく分からない。アンフィの舞台に伊瀬谷Aがいて、観客の中に自分がいる。
そんな簡単な事実が、未だ納得できない。

理解はしているはずだ。ただ、実感が湧かない。
目の前で歌っているのに、喋っているのに、それはまるで映画でも観ているようで。
そう、言うなれば、VR配信のような。まるでそんな感覚だった。

一回目のトークタイムが終わって、坂本真綾さんの曲のメドレーが終わって、Argonavisのメドレーも終わって。
どんどん曲が終わっていく。どんどん時間が過ぎて行く。

『まだ終わらないで』と叫びたい気持ちが、身体中に溢れかえる。
まだ終わりではないのに、まだ曲は続くのに、一曲終わる度に、恐怖が胸を覆っていく。

あぁ、どうしてだろう。
私はずっと、彼女のことが好きだったのに。

他の人たちが彼女を知る前から、私は彼女のことが好きだったのに。
ドマイナーで、今でも知っている人は限られているようなアニメのOPを歌っていたあの頃から、私は伊瀬谷Aが好きで好きで堪らないのに。

私がこの場に居るどのファンより、きっと一番最初に好きになった。
一話で聞いてから、ずっと彼女の歌が好きだ。

１０数年、彼女への思いを煩っていた。

10数年たって、漸く会うことができた。ステージから観て左側の、端寄りの手前から二列目。

よくも悪くもない席だと思う。けれど、私は彼女が大人しく歌うことができないことは分かっていて、私の近くに来てくれることも分かっていて、そして私の予想通り近くで歌った瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ。

綺麗な歌声の間に、嗚咽のような声が聞こえる。物販で買ったタオルが視界を遮って、まともに彼女の姿を見れない。

待って、どうして
嫌だ、もう終わってしまうのに、もう二度と会えないかもしれないのに。

私はタオルで強く目元を拭い、ステージの方を見た。変わらず、彼女は楽しそうに歌っていた。