スターラブレイション 【吉沢亮】

episode25 ページ25

和柄のカウンターの椅子に座り、吉沢が何が食べたいか聞いてきた。

「まぐろ…」
『大将、鮪』

重力を感じない吉沢のトーンとは反比例に大将さんは大きい声で注文を繰り返した


まず、回らないお寿司なんていつぶりだろう

白米ということで避けてきた為お寿司自体4年以上食べていない。



『生でいい？』
「あ、うん」


普段あまりお酒も飲まない
初めて飲んだ時に自分がお酒に弱いと知った

2杯でもう顔が真っ赤で身体が熱くなり、饒舌になる
マネージャーからもお酒には溺れるなと言われている



『はい、乾杯』
「…乾杯」


瓶ビールからコップに注がれた生ビールがカチンと触れる音
ビールを喉に通すとその日の疲れがぶっ飛ぶような弾ける炭酸が心地良い


「はぁ…美味しい」
『今日電車？』
「てかタクシーで来る？…いや、そっか。吉沢亮だもんねー」


こんなの電車に乗ってたらまず一般人でも三度見する
私のように変装してもすぐに気付かれるわ。


『仕事だったからそのまま来たんだよ』
「あ、なるほどね」


はい！お待ち！

握りたてのプリップリの鮮度の高い鮪が一貫
…美味しそう

「いただきます…」


口に含んだ瞬間、鮪がとろけて温かいシャリが口内を幸福感で満たしていく


「ん〜！美味しい！」
『一口でけえよ』


そう言いながら鯛を手で口にする吉沢。
でもなんでお寿司？
しかも回らない…


『寿司嫌いな女っていないでしょ』
「誰情報よそれ」
『優子ちゃん。』



ピタッ

…そういやこの二人って仲良い。
亮君、
優子ちゃん
下の名前で呼ぶんだ


そりゃ映画で二度も共演したら仲良くなるよね
同世代なわけだし


「…優子ちゃん…」


完全に箸を止めてしまった私に気付いたのか
吉沢が私の顔を覗き込んできた。


「…な、何。」
『…妬いてんの？』


は？


「妬くわけないでしょ？」
『つーかユリって名前、何で芸名使ってんの？』


…話題変えてきた
自分の名前が嫌いなわけではない
両親がつけてくれた名前だから好きも嫌いも無い


だけど、実際にAとして働くのは抵抗があった
どこか知らないところで知らない誰かに自分の名前を呼ばれることが嫌だった



『だから芸名にしたんだ。へー…』
「…」
『Aって感じするけど』
「名前で呼ばないで」


『A』


「…本気でやめて」


普段呼ばれることがない

思わず顔が赤くなってしまった

episode26→←episode24

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す