落ちる雲 ページ15
「雲はどうして落ちてこないの？」
よく晴れた空を見て、Aはふと疑問を口にした。猫じゃらし粉の脱穀方法を聞いてたクロムやコハク、スイカも釣られて空を見上げる。
「いつも唐突だなお前は」
「今思ったの。だって物には質量があると教えてくれたのは千空でしょう」
もしも浮くなら浮力が必要なはずだと、珍しく科学用語を使うAに口角があがった。
会った当初に比べて、こいつは科学に疑問を持つことが多くなったと思う。
「確かに、なんで浮かんでんだ？てかそもそも雲って何でできてんだ？」
「ハ！気にしたこともなかったな」
「きっと風が強いからだよ！」
思いも思いに物を言うバカども。
ここは小学校かなにかか。
「浮雲ってあるでしょう。二葉亭四迷の」
「あーあったな、そんなの」
「雲は浮くものじゃないの？」
あれだろ、夏目漱石と同じく「貴方のものです」を「死んでもいい」と訳した超絶ロマンスオヤジ。
気候学に文学を持ち出すAに呆れつつ、こいつの好きそうな話だなと思った。
「雲ってのはな、大気中にかたまってる水や氷の粒だ」
「じゃあ雲は水なのか！」
「そしてAが言ったように、物には質量がある」
「だから雲は落ちてる」と言い切れば、Aがなんとも言えない顔を見せた。
他の奴らも1mmも飲み込めてねえ顔を晒した。
「でも浮かんでるよ」
「落下がトロすぎて人間の目じゃ観測できねえだけだ。雲粒の直径は約0.02mm。落下速度は秒速約1cm程度。つまり、雲の高さを1000mにすっと、地上に落下するまでに28時間近くかかる」
「秒速1cm…」
そもそも、雲粒は小さすぎるから、落下するあいだに蒸発しちまうもんだ。
もしくは雲の下の上昇気流によって、再び上空へと吹き上げられる。
だから実質落ちてはいるが、浮いてるように見える。
数値を出され押し黙るAだが、今回は数がそこまで面倒じゃねえから理解しやすかったようだ。
納得したような声を漏らすと、一際大きな雲をじっと黒曜石が見つめる。
「千空の世界には、不思議が少ないんだね」
「むしろ分かんねえモノは調べるだろ普通」
「そうかな」と眠たげな目がこちらを向いた。
「不思議なことを不思議だと受け止めるのはダメかな」
「…いや、」
「お前らしくてその方がいい」と言おうとして、二人きりじゃねえのを思い出し、言葉を飲み込む。
「…ククク。好きにしろ」
お前が投げかける質問に答えるのは、結構好きなんだ。
独特な切り返しは聞いていて飽きないから。
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sora(プロフ) - キャンディさん» 書き込みありがとうございます。アニメとはまた少し違う解釈ですが、私なりにDr.STONEを描いているので面白いと言っていただけて嬉しいです。まだまだ長い物語ですので、気長に読んでいただけると幸いです。よろしくお願いします。 (11月2日 9時) (
レス) id: 90b12c249d (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ(プロフ) - アニメ3期の後読みに来ました！面白いです！！面白すぎて一気読みしてしまった (10月28日 12時) (レス) @page26 id: 467824b5e4 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - バレーボールさん» 書き込みありがとうございます。お返事が遅くなり大変申し訳ありません。アニメより原作沿いで書いていましたので、少し噛み合わないところもあったかと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございます。アニメ3期の後にでも続きを読みに来てください。 (2022年6月1日 9時) (レス) id: a1dae06abc (このIDを非表示/違反報告)
バレーボール - アニメでストーリーを見るのと平行してここまで読ませて頂きました。原作のストーリーとキャラクターのイメージを壊さない物語構成と文才に感動しました。こんなに素晴らしい作品を読ませて頂けて光栄です。ありがとうございました。 (2022年3月30日 15時) (レス) @page8 id: d448fd1791 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - スズさん» 書き込みありがとうございます。徹夜は体に悪いので程々にされてくださいね。アインシュタインの手紙は、私も初めて知った時はっとしました。Dr.STONEの根幹にあるといいなと勝手に思っています。完結までもう少しありますので、最後まで読んでいただけると幸いです。 (2021年5月15日 10時) (レス) id: 245919ea47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年1月12日 14時
