souko (ページ8)

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【OP：キッド】ゆめひろう④ ページ8

「さっきの戦闘を見てて思った。私この船で生きていける気がしない」
「だろうな」
「意地悪だなキッドさんて」

もう少しオブラート包んでくれない？
ストレートに答える俺に、女は大きくため息をついて、椅子から立ち上がる。

「まあ、だからさっき言ったことは忘れてください。他に乗せてくれそうな人探してみる」
「待て。根本的に、女ひとりで新世界へ行くことの方が現実的じゃないだろう」
「うん。でも前半の海で見つからなかったから」

ケロリと答える姿に、船医もキラーも、話を遠巻きから伺ってたクルーたちも唖然とする。
この船に乗れる自信はねえが、それでも行くってか。

「さっき見かけた麦わら海賊団なんか優しそうだっ.」
「だったら俺が乗せてってやる」

それほどの覚悟があるなら、非戦闘員の1人や２人、抱えられねえほどヤワじゃねえ。
麦わらが嫌だとかそんなんじゃねえ。

「おいキッド？！」
「え、ほんとに？」
「どうせ新世界を目指すんだろ」

いつもなら絶対に首を縦に振らねえような話だ。
自分の命を自分で守れねえような甘ちゃんを、俺の船に乗船させるなんてありえねえ。
だがそれを覆すほど、(会った当初から)この女には俺を認めさせる何かあると思えた。

「優しいねキッドさん」
「は？」
「うん、ごめん。素直に感謝だけしておく」
「覚悟がないと分かったら海にたたきおとす」
「あ、優しくないやっぱり」

軽口を叩いてくる女に、俺を畏怖するクルーの何人かがおぞましいものを見る目で眺めてやがる。
そういう女だからこそ、どうにも俺も調子が狂うわけだが。

当の本人は気にもせず、ぺこりと頭を下げた。

「じゃあとりあえず新世界まで、乗せてってください」
「ハハハ、新世界に着いた途端に死ぬかもな」
「死なないように頑張るよ。まだ本出来てないし」

さらりとそんなことを返しながら、女が当然のように笑う。
その笑顔がやけに楽しげだったのもあって、俺も釣られて口角が上がった。

「いいぜ、死ぬ気で本書きやがれ」
「命を粗末にした事はないけどね」
「そういう奴なら歓迎してやる」

死にたがりは俺の船に要らねえ。

「キッドさんに夢を拾われたよ」

右手を差し出してくる女が、海賊に向けるもんじゃねえだろと思うほど爽やかな笑みを浮かべる。
その華奢な手を軽く叩き返した。

「名前は」
「A」
「せいぜい拾われた夢にしがみつくんだな、A」

そうやって完全なる“お荷物“を積み込んで、俺たちの船は新世界へ出航した。